
2023.03.23
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
前回述べたように、5Gでは、「超高速」、「大容量」、「多数同時接続」、「超低遅延」が現在の4Gから10倍向上することを目指しています。すると、いままではできなかったようなことが、できるようになる可能性が広がります。
例えば、総務省は5G利用のアイデアを募集し、コンテストを行いましたが、総務大臣賞に選ばれたのは、「クレーンの遠隔操作」です。
オペレーターからは見えない状況も、高精細の画像を「超高速」、「大容量」によって伝送することができ、的確に伝わりますし、「超低遅延」によって間違いなくクレーンを操作することができるというわけです。
すると、オペレーターは作業現場に行かなくても、例えば、都内にある遠隔操作室から、全国各地の作業現場のクレーンを稼働させることもできるようになるかもしれません。
通信の活用は、いままでは通信事業者に任されていましたが、このアイデアのように、別の事業者が通信事業者の提供する5Gを活用し、従来にないサービスを生み出していくことが増えると思います。それを、B2B2X(Business-to-Business-to-X)モデルといいます。
例えば、医療分野では遠隔診断が期待されています。近隣に医療機関がない地域に住んでいる人でも、身体の状態を超高精細画像で撮って医療機関に伝送すれば、的確な診断が受けられるようになります。
このように、通信事業者の提供する5Gを別の事業者が活用し、エンドユーザーに新しいサービスとして提供されるのです。
実は、通信事業者とバーティカル産業(特定の市場の業種)が連携し、新たなサービスを生み出す実証実験も始まっています。そこには、様々なIoTや自動運転車、ドローンを使った様々なサービスなどが含まれています。
その中で注目したいのが、総務省が推進する「ローカル5G」です。これは、地域や個別のニーズに応じて、多様なプレーヤーが5Gを活用できるようにするものです。
例えば、鉄道の運行業務や自治体の防災システム、設備の状態監視、空港や港湾の港内無線システムなどが考えられています。
さらに、そこには私たち一般の市民も参加できると思います。例えば、お祭りや催し物などのイベントのときに、8Kのような超高精細画像や動画が撮れるカメラでその様子を伝送したり、「多数同時接続」ができれば、通信を利用してその場にいる人たちが一斉に参加できる仕掛けを行うことも可能になってきます。
いままでは、通信事業者が提供するサービスを受けるだけだった私たちが、そのサービスを活用して、こちらから新たなサービスやエンターテインメントなどを発信する領域が大きく広がる。それが第5世代の大きな特徴といえます。
そのとき社会がどう変わっていくのか。それは、第4世代で、私たちはパソコンからスマホを選択して発展させたように、私たち自身がなにを選択し、どう社会に関わっていくのかにかかっていると思います。
#1 移動通信システムの“世代”って、なに?
#2 移動通信システムの進化でなにが変わった?
#3 第5世代は、なにがすごいの?
#4 第5世代でなにができるようになるの?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。