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日本古来の家は、愛されてきた家ほど長もちである

私たちが立ち上げたJTIの目的は、21 世紀の住まいと暮らし方に関するひとつのモデルをつくることであり、それには、異世代間の家の循環が必要だと考えています。しかし、木でできている日本の家はもともと一世代ぐらいのもので、異世代間の循環が可能なのかと思われがちですが、実は、そんなことはありません。民俗学者の柳田国男は、古来、日本の家とは、「大家(大きい家)」であると言っています。大家の周りには、子どもが産まれるとか、客人を迎えるなど、必要に応じて小屋が新築されます。それが建ち並んでくると、お屋敷となります。小屋が敷き詰まっているという意味です。小屋は必要に応じて建て増すものなので、寿命は長くなくても構いません。

ところが、戦後、日本の都市が焼け野原になり、とにかく住宅の必要に迫られたとき、この「小屋」の発想で家を増産したのです。その時には、家の寿命は二の次だったわけです。日本本来の家である大家はしっかり造られています。木でできているからこそ、例えば、柱に不具合が出れば、その部分を切り取って新しいものに入れ替えることも可能でした。こまめに手入れをすることで、家は長期間、維持されるのです。そうした家は、地方にいけばまだたくさん残っています。

戦後の日本では、古い家は減価償却され値段がつかないことになっていましたが、ここ最近、築50年を過ぎた家がビンテージとして再評価されるようになっています。2009年からは長期優良住宅という高耐久の家造りも制度化されています。考えれば、長くもっている家というのは、その地域には災害がなかったことの証しであり、そこに住んできた人たちがこまめに手入れをしてきた証しでもあります。手をかけられ愛されてきた家は、やはり、クオリティが高く、味わいがあります。それは、利便性とはまた違う、住む快適さにつながるものです。こうした家に価値を見出す人に循環することは、人生を楽しむために家を持つことにつながっていきます。家のために人生を捧げるような本末転倒な状況を打開することも、21世紀の住まいと暮らし方に関するひとつの提案であると、考えています。

JTIの詳しい取組みは、ホームページをご覧ください。
http://www.jt-i.jp/index.html

#1 持ち家と借家、どちらが良い?
#2 いまは、家を買うリスクが大きい?
#3 持ち家はライフスタイルに応じた選択肢ができない?
#4 良い家を見つける良い方法は?
#5 日本の家って循環できるの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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