2024.03.21
- 2019年6月4日
- リレーコラム
#2 移動通信システムの進化でなにが変わった?
井家上 哲史 明治大学 理工学部 教授私たちの生活を変えた、第4世代までの集大成のスマートフォン
移動通信システムは、2000年代になると飛躍的に進化します。まず、世界各国でバラバラだった規格を統一しようという動きが出てきます。結果的には、ひとつに統一はできませんでしたが、標準規格ができ、端末が世界中で使えるようになります。これが第3世代です。
さらに、進歩する様々な技術が活かされます。例えば、LSIのさらなる進化により、HSPA(High Speed Packet Access)が実現します。つまり、パケット通信が、大容量、高速になったのです。
これにより、第2世代ではWebにアクセスできるとはいえ、サイトを簡略化して見ることしかできませんでしたが、通常のサイトも見られるようになったのです。背景には、さらに、光ファイバー・ネットワークの普及もありました。これが第3.5世代です。
さらに、業界標準団体である3GPPが、パケットデータ通信速度のさらなる高速化(LTE)を提唱します。これにより、移動通信システムは有線のパソコンとほとんど変わらない通信性能になったのです。
すると、ケータイは、電話機から、Webアクセスやコンテンツ視聴の道具となっていきます。そして、2007年にiPhoneが発表され、ケータイはスマートフォン化していくのです。このあたりが第3.9世代と呼ばれています。
2010年代になると、LTE-Advancedという国際標準規格が設けられ、さらに高速データ通信が実現します。これが第4世代です。
このように、アナログ通信の第1世代から始まり、ほぼ10年ごとに、その時代の最新の技術や社会的インフラなどを結集し、その環境を基にユーザーが求めるソフトウェアを開発し、前時代では机上の空論だった機能を実現してきたのが、移動通信システムの歴史といえます。その節目が“世代”というわけです。そして、その集大成が、いま、スマートフォンであると思います。
第1世代のころの1980年代といまでは、私たちの生活は大きく変わりました。その中心にあった道具がパソコンであり、いまではスマホであるといえます。最近では、スマホだけでパソコンは持たない若者が増えています。スマホが彼らの生活を支える道具になっているのです。
このままスマホは発展していくのか、あるいは、新しいなにかが現れるのか、それは誰にも予測することはできないでしょう。しかし、その兆しが現れるとすれば、それは次の第5世代にあると思います。
次回は、第5世代の技術について解説します。
#1 移動通信システムの“世代”って、なに?
#2 移動通信システムの進化でなにが変わった?
#3 第5世代は、なにがすごいの?
#4 第5世代でなにができるようになるの?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。