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#2 マイクロプラスチックは有害、は誤解!?

永井 一清 永井 一清 明治大学 理工学部 教授

マイクロプラスチックの様々なことが、まだ検証の段階

カメの鼻からプラスチックストローを引き抜く衝撃的な映像を、誰でも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。この映像が、プラスチックが海を汚すと見なされるようになったきっかけのひとつです。

実際、死んで浜に打ち上げられたクジラの胃の中を調べると、ポリ袋がたくさん詰まっていたこともあります。プラスチックが海洋生物に影響を及ぼしているのは事実なのです。

さらに、海に漂うペットボトルなどのプラスチック類が紫外線や波によって細かく砕け、5mmより小さくなったものをマイクロプラスチックと呼ぶようになりましたが、それらは、小さな魚なども餌と間違えて口に入れてしまうことがわかってきました。

マイクロプラスチックが胃に詰まって死んだ魚が見つかるようになったからです。

そのため、魚を捕って食べる人にも影響が出るのではないかと言われ始めたのです。

特に、私たち日本人は、水銀を摂った魚介類を大量に食べた人たちが神経疾患に罹った水俣病のような公害を知っているだけに、深刻な問題と捉えた人も多いと思います。

しかし、プラスチックを口に入れたクジラや魚などが死んだのは、毒性では無く、プラスチックが胃に詰まり、食べ物を食べられなくなったからです。

ところが、人の場合は、成人がマイクロプラスチックを口に入れても、それは消化されず、大便として排出されるのです。つまり、水俣病とは状況が異なるのではないかと思われます。

一方で、マイクロプラスチックに海洋中の汚染物質が付着し、それが体内に吸収されるという意見もあります。

しかし、それも仮定の説であり、実証されていません。マイクロプラスチックについては様々のことがまだ検証の段階で、未知の部分が多いのです。

例えば、プラスチックがどこまで小さくなるのかも、実はわかっていません。これらの疑問については、科学的に証明していかなければならないところであり、いま、世界中の研究者が取り組んでいるのです。

いまの段階で確実にわかっていることは、海洋生物が餌と間違えてプラスチックを口に入れることです。

例えば、プラスチックの前に人が多用していた金属やガラスのビン、陶器などは、重いために海底に沈んでしまいます。ところが、プラスチックは軽くて浮くために魚たちが餌と間違えるのです。

つまり、いま、私たちにとっては、プラスチックを海に流さないことがなにより重要なのです。

実は、そのための対策を各国が取り始めています。では、日本はどんな対策を取っているのでしょうか。

次回は、プラスチックのごみ処理の取り組みについて解説します。

#1 「石油=悪」ゆえに「プラスチック=悪」、は誤解!?
#2 マイクロプラスチックは有害、は誤解!?
#3 日本のプラごみ対策は遅れている、は誤解!?
#4 植物由来プラは自然に還る、は誤解!?
#5 レジ袋は紙袋にすれば良い、は誤解!?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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