2024.03.21
- 2019年12月10日
- リレーコラム
#2 TOBってどういうこと?
名越 洋子 明治大学 商学部 教授敵対的TOBか、友好的TOBかは、株式を買い付けられる企業が決める
TOBとはTake Over Bidのことで、株式公開買い付け制度を意味します。
公開とは、株式を取得する側が、買い付けに当たって株価と買い付け株式数を公に周知させたうえで、買い付けるということです。最終的に3分の1以上の株式の保有が目的であれば、TOBを行うことが、2005年(平成17年)に改正された金融商品取引法で定められました。
仕組みは、まず、買い付け側は、財務に関する届け出をし、新聞広告で買い付けを公表します。買い付け価格はプレミアム付き価格となります。例えば、前日の株価の終値の1.5倍の価格で買い付けるというわけです。
これに対して、対象企業は意見を表明します。一般的に、買い付けに対して、賛成、反対、中立、保留のいずれかになります。それが「賛成」の場合、友好的TOBとなり、「反対」の場合は敵対的TOBと区分されます。
前回述べたように、株式の取得を願うケースも多く、その場合は、当然「賛成」ですから、友好的TOBとなるわけです。ただ、実際には、「保留」などの表明もあり、区分が難しい場合も多くあります。
要は、敵対的か友好的かは、買い付けの対象となる企業の経営陣にとってどうかということです。
彼らが「反対」を表明しても、一般の株主、従業員、顧客にとって必ずしも敵対的と感じられず、友好的とみなされる場合もあるかもしれません。
なので、一般の株主にとっては、TOBに応じるかどうかは自ら判断して良いのです。
経営陣が、TOBに対抗する買い付けを別の機関などに依頼するケースもあります。それをホワイトナイトと言います。
日本で敵対的TOBが成功しにくかったのは、ホワイトナイトが有効であったことがひとつの理由だと思います。
また、意外と多いのが、非上場化のためのTOBです。要は、経営陣が買収することであり、MBO(Management Buy-Out)と言います。
上場すると、株式市場から資金が得られる一方、敵対的なM&Aなどのリスクや株主総会対策もあることから、経営陣など関係者で株式を買い占めてしまおうということです。
しかし、経営陣であれば、株価をできるだけ安くしておいて、そのときに買い付けすることも可能なので、それがインサイダー取引にあたるのではないか、そして、株主価値を棄損するのではないかと、問題になることもあります。一般の少数株主は、そうした動きにも注意が必要です。
次回は、実際に起きた敵対的TOBの成功例について解説します。
#1 M&Aってどういうこと?
#2 TOBってどういうこと?
#3 敵対的TOBの成功って、乗っ取り成功のこと?
#4 敵対的TOBが成功しない理由は?
#5 TOBもM&Aも、一般の生活者には他人ごと?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。