
良いホワイトナイトを見つけることが有効な対抗TOBになる
日本でも、過去に敵対的TOBはありましたが、大手企業同士ではなかなか成功しませんでした。
例えば、2006年に、大手製紙会社が準大手の製紙会社に対して、経営統合を目指してTOBを仕掛けました。準大手側が反発したため敵対的TOBとなり、別の大手製紙会社に救済を求めました。いわゆるホワイトナイトによる対抗TOBです。結果、この敵対的TOBは失敗に終わりました。
ホワイトナイトというと、ファンドがイメージされますが、この場合は、敵対的TOBの目的が業界再編であったため、仕掛けた大手製紙会社のライバル会社がホワイトナイトになったわけです。
TOBは当事者の2社だけでなく、業界全体の問題にもなるわけです。
今年の7月には、大手旅行会社が不動産会社に対してTOBを仕掛けました。不動産会社側は、当初は戸惑っているような態度でしたが、その後、「保留」の表明を出したので、敵対的TOBに分類するのか微妙なところでした。
その後、ホワイトナイトを探し、その目処が立ち、「反対」に変わりました。
実は、このときも、大手旅行会社側は、45%という上限を設定した買い付けを行い、資金計画に無理がないようにしています。前回述べた大手商社と同じやり方です。
おそらく、他の株主を味方にすることで、株主総会の議決権をもつことを企図していたのでしょう。
このように、近年のTOBは、あらかじめ仲間となる株主を確保しておくことで、過半数の株式所有を目指さず、資金面で計画通りに進めることが特徴です。その意味では、TOBを仕掛けやすいやり方と言えます。
一方、対象企業はホワイトナイトによるTOBで対抗しますが、その正体は、資金力のあるファンドばかりではなく、TOBを仕掛けた側にとって、業界のライバル会社であることもあります。
なお、大手旅行会社による不動産会社に対するTOBは、不動産会社の株価が上昇し、TOBによる買付価格を大幅に上回りました。この状況ですと、誰もTOBに応募せず、失敗に終わったことになります。
どういったところに救済を求めるのかも、有効な対抗TOBの手段となりますが、株価上昇により、TOBが失敗する場合もあります。
次回は、TOBやM&Aの影響について解説します。
#1 M&Aってどういうこと?
#2 TOBってどういうこと?
#3 敵対的TOBの成功って、乗っ取り成功のこと?
#4 敵対的TOBが成功しない理由は?
#5 TOBもM&Aも、一般の生活者には他人ごと?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。