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2018.11.09

#3 PBの黒字化って、借金が減るということ?

#3 PBの黒字化って、借金が減るということ?
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PBの均衡は借金残高の増減と一対一に対応するわけではない

最近、安倍首相はプライマリーバランス(PB)の黒字化についてたびたび言及しています。確かに、PBの均衡とは、税収と政府の支払いが一致するということで、黒字化になれば余裕が出るように思えます。

ところが、ここでいう政府の支払いとは、様々な公共サービスのための財政支出等を指し、過去の借金の元利払いは含みません。借金の額が小さければそれほど問題になりませんが、約1280兆円の借金がある日本政府にとっては、金利が1%でも、12兆円になります。

近年の赤字国債の発行額は40兆円弱ですから、単純にいえば、新たな借金の1/3ほどは、以前の借金の利払いのためということになります。仮にバブルの頃のように金利が7~8%になれば、赤字国債の発行、つまり新たな借金はとても40兆円では済まないでしょう。

要するに、PBはとても重要な指標ですが、PBの均衡は借金残高の増減と一対一に対応するわけではありません。むしろ、PBとは、公共サービスのための財政支出を、どの程度税収で賄えているのかを表す指標であるということです。すると、公共サービスのための財政支出を抑えれば、同じ税収でもPBは黒字化することになります。

実は、1996年に発表された、アメリカのアレシナ教授と、イタリアのベロッティ教授の共同研究によると、財政再建に成功した国の政策は、歳入拡大よりも歳出削減に力を入れたものであったということです。その歳出削減の内容を見ると、成功ケースでは、歳出削減の過半を社会保障や人件費の削減で達成しており、失敗ケースでは、公共事業の削減に頼っています。

また、歳入拡大については、上手くいったケースは法人税と間接税が中心であるのに対して、失敗ケースは所得税や社会保険料に頼っていました。

つまり、財政再建は、人件費と社会保障費の削減、法人税と間接税のあり方がキーポイントになりそうです。間接税といえば、中心は消費税です。社会保障費の削減と消費税のアップが日本社会でも財政再建に繋がるのか、考える必要があると思います。

次回は、民主主義国家における財政再建について解説します。

#1 日本政府の借金って、どういう状態なの?
#2 日本政府の借金はなぜこんなに膨らんだの?
#3 PBの黒字化って、借金が減るということ?
#4 財政再建が難しいのはなぜ?
#5 財政再建を実現する方法って、あるの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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