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#3 カルニチンを摂ればやせられる?

明治大学 商学部 教授 浅賀宏昭

ただ摂るだけでは、期待した効果が得られないケースもある

食品成分の機能が研究によってわかるようになると、その機能の結果(効果)だけが大きく取上げられてPRされがちです。しかし、実際はそれほど単純に考えられないことも多いのです。

例えば、カルニチンがいわゆる痩せるためのダイエットに有効とよく言われます。実際にスポーツドリンクに配合されている商品も見かけますね。しかし、カルニチンがどうして痩せるのに寄与するのかはあまり知られていないようです。

体内に蓄えられている主要な脂肪成分である脂肪酸の代謝について考えてみましょう。脂肪酸を細胞内で活動するためのエネルギーに変えるにはアシルCoAという物質に変えて、さらにミトコンドリアという細胞小器官のなかに押し込む必要があります。カルニチンはこの押し込みに必要な成分なのです。ですから、カルニチンを摂って脂肪酸が変化したアシルCoAをいくらミトコンドリアに入れようとしたところで、身体がエネルギーを使わなければ、あまり意味はありません。つまり、カルニチンを摂ることと運動を組み合わせることで、はじめて脂肪を効果的にエネルギー源として消費できるのです。カルニチンを摂っただけでやせるというようなことは決してありません。

ところでカルニチンは体内では肝臓などで合成されますが、加齢とともにその量が減少していくことがわかっています。ですから高齢になると、身体がエネルギーを使うときでも、脂肪酸が消費されにくいという状況を招いてしまいます。もちろん、そうならないためには、摂取して補充するということは合理的ではあります。

かつての仏教の肉食禁止令の影響もあったかも知れませんが、日本では、食べ物としては長らく肉より魚の方をよく食べてきたようです。和食のメニューでも肉より魚が食材として多く使われています。高齢の方には肉類を避ける傾向もよく見られますが、実はカルニチンは肉類に多く含まれているのです。特に羊肉の、なかでもラムよりマトンにより多く含まれていますので、積極的に食べる機会を持つべきです。ただ、メタボリックシンドローム、あるいは肥満と言っても良いかもしれませんが、これが生活習慣病につながることを考えれば、マトンやラムにも脂肪は含まれていますので、量をほどほどにしなくてはなりません。脂肪分の摂り過ぎを避けたい場合は、カルニチンのサプリメントの利用は有効でしょう。運動時にカルニチン配合のスポーツドリンクを選ぶのも良いかもしれません。

要は、月並みなアドバイスになってしまいますが、肉だけでなく、カルニチンだけでもなく、バランスの良い食事を心がけることです。もちろん運動も、ですね。機能的といわれる成分には、つい期待してしまいますが、サプリメントなどでそれだけを摂っただけでは、効果がないケースもあるということです。

次回は、過剰摂取すると逆効果になる成分の例について紹介します。

#1 トクホって、何がすごいの?
#2 一般のスポーツドリンクに効果はある?
#3 カルニチンを摂ればやせられる?
#4 ビタミンEはたくさん摂れば効果も大きい?
#5 トレハロースが人類の夢をかなえる?
#6 コラーゲンはやっぱり身体に効く?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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