
2023.03.23
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トクホや機能性表示食品などには、摂取量の目安が表示されています。それはさまざまな試験の結果や、信頼性の高い論文に掲載されたエビデンスなどを基に検討されて定められます。
骨粗しょう症の予防や抗酸化作用があるといわれるイソフラボンのサプリメントを、トクホとして認定する際に議論がありました。イタリアでの研究報告から推測した健康影響発現量(1日あたり150mg)の半分を摂取量の上限にしようとしたのですが、これについてです。具体的に言えば、日本で納豆を1日に3パック以上食べている人は、この「上限」を超えた量を摂取している計算になるからです。しかし、納豆好きで健康被害を被った人がいるでしょうか。そう、いないのです。だからもっと多めの量を上限としても良いのではないかと。
そこで、サプリメントの形でイソフラボンを摂ることと、納豆に含まれる良質なタンパク質をはじめとした様々な栄養素や機能性成分とともにイソフラボンを摂ることの違いが議論されたのです。納豆を食べる場合はかさ張るので摂取量「上限」を超えてもたかが知れていますが、サプリメントで摂ろうとすればその数倍もの量までお手軽に摂れてしまいますから、あまり高く設定しない方が良いだろうと最終的に判断されたようです。
ビタミンEも抗酸化作用があり、アンチエイジングに効果的といわれている脂溶性ビタミンの一種です。しかし、これをサプリメントなどで過剰摂取すると、出血リスクが高まるなど、いろいろな問題が起きるという結果が報告されています。これについて、少し詳しく話しましょう。
ビタミンEの抗酸化作用は、ビタミンEが酸化されてビタミンEラジカルになることで発揮されています。実は、これは体内ではビタミンCによってふたたびビタミンEに戻るのです。ここでビタミンCが無かったらどうなるか考えてみてください。そう、ビタミンEラジカルが溜まってしまいます。そしてこのビタミンEラジカルは、ビタミンEとしての機能が無いだけではなく、周囲にトラブルを引き起こす可能性すらあります。ですから、ビタミンEはサプリメントでそれだけをとるのではなく、良質の植物油やアーモンドなどのナッツ類と野菜を組み合わせたサラダなどで摂ることが良いのです。ビタミンCなどとともにバランスよく摂れますから。
また、水溶性の成分は摂り過ぎても体外に排出されやすいため、問題が起こることは稀ですが、ビタミンEやビタミンAのように油にしか溶けない脂溶性成分は、過剰分の排出が難しく体内に溜まりやすいということもあります。実際に、ビタミンEの大量摂取をすると寿命が縮まるという例の報告もあります。一般の食品で摂っていれば、摂り過ぎにもなりにくいでしょうから、ビタミンEはそれだけをサプリメントで摂るよりも、普段の食事で摂っていくことが理想だと思います。
次回は、いま注目の夢の成分トレハロースについて紹介します。
#1 トクホって、何がすごいの?
#2 一般のスポーツドリンクに効果はある?
#3 カルニチンを摂ればやせられる?
#4 ビタミンEはたくさん摂れば効果も大きい?
#5 トレハロースが人類の夢をかなえる?
#6 コラーゲンはやっぱり身体に効く?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。