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#5 日本に民泊は定着する?

藤井 秀登 藤井 秀登 明治大学 商学部 教授

住民が中心となり、議論を深めることが大切

この連載の第1回でも述べましたが、民泊は日本にも一定程度必要であり、意義があることだと考えます。実際、インバウンドの増加傾向は続いており、その経済波及効果も期待できることから、東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年を見据え、宿泊施設の供給不足に対しての緊急対応策として、特にB2C型の民泊は広がっていくことが考えられます。

そこで、民泊市場を健全に成長させていくには、まずは、民泊新法に則り、民泊を行う者は住宅宿泊事業者として地方公共団体に届け出を出し、仲介業者は施設の紹介をする際には、登録事業者であることを確認し、いわゆるヤミ民泊を締め出していくことが必要です。宿泊者に対しては本人確認を確実に実施すること、また、地域の実情に合せた地方公共団体の条例を順守することも大切です。民泊の構成員が協力的な関係を構築できれば、地域住民も信頼し、安心を増していくでしょう。しかし、地域住民の合意が困難であれば、例えば、所有者の4分の3以上の合意でマンションごと民泊を禁止することも考えられます。逆に、地域住民の合意を得るために、民泊施設(マンション一室や住宅)の家主と話し合いながら、地域住民の望む方向へ民泊の制度設計をしていくことも想定できます。受益者と受苦者との間で利害関係を調整しながら、問題点を解決していくのです。簡単なことではありませんが、健全な民泊市場の発展には必要です。

そのためには、地域住民も問題解決に向けて積極的に声を上げ、議論に参加してほしいと思います。その際には、民泊には経済効果だけでなく、金銭に換算できなくても非常に有益な、文化的、社会的交流のきっかけとなる価値があることも議論のテーマとして考えていただきたいと思います。ある程度、住民が中心となって議論を進めていくことが、日本に民泊を根づかせ、発展させていく基本になると考えています。

#1 なぜ民泊が必要なの?
#2 民泊の問題点は改善できるの?
#3 民泊を規制する地方公共団体の条例は法律と対立する?
#4 P2P型には、B2C型の民泊にはない魅力がある?
#5 日本に民泊は定着する?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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