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#1 なぜ民泊が必要なの?

藤井 秀登 藤井 秀登 明治大学 商学部 教授

観光立国を目指す日本にとって民泊は必要であり意義がある

2018年6月、住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が施行されました。民泊とは、個人宅の一部やマンションの空き室などを宿泊用に提供する新しいビジネスモデルです。ところが、これを従来の旅館業法に照らし合わせると、ほとんどが要件を満たしておらず、結果として、違法な宿泊業となってしまいます。そこで、民泊新法を施行し、この新しいビジネスモデルを制度化しようということになったのです。

その背景には、日本を訪れる外国人旅行者、いわゆるインバウンドが急増していることがあります。もともと、2003年に当時の小泉首相が、「2010年に訪日外国人を1000万人にする」と観光立国を宣言し、ビジット・ジャパン・キャンペーンが始まりました。戦略的なビザ要件の緩和、航空産業の規制緩和による海外の格安航空会社、いわゆるLCCの日本乗り入れの増加、さらに、2015年まで円安が続いたことなどが重なり、インバウンドは増加し続けました。1000万人を達成したのは、当初の目標より遅い2013年でしたが、その後もインバウンドは順調に増えつづけ、2016年には2000万人に達し、今年(2018年)は1月から4月だけで1000万人を越え、このまま推移すれば3000万人に達すると予想されています。

この急激なインバウンドの増大に、都市部や、人気の観光ルート(ゴールデンルート)沿いの地域では、宿泊施設の供給が追いつかなくなってしまったのです。そこで、民泊の仲介最大手であるアメリカのAirbnb(エアビーアンドビー)などが紹介する日本国内の民泊が注目されるようになりました。一方で、国内の都市部などでは築年数の経ったマンションに空き部屋が多いため、空き家が社会問題になっている状況です。借り手と貸し手、双方のニーズが合致した形で、民泊が新しいビジネスモデルとなっていったのです。さらに、2020年に東京オリンピック・パラリンピックをひかえていることを考えれば、イベントリスクや感染症の大流行、周辺諸国の政情不安や世界的な大不況などが発生しない限り、こうした傾向は続くでしょう。日本にも民泊は一定程度必要であり、意義があることだと考えられ、その意味で、民泊新法の施行により制度化された民泊は、その機能を発揮していく可能性は高いと考えられます。

しかし、一方で、もっと議論を深めていかなくてはならない問題もあります。それは、現在すでに顕在化している、宿泊者と地域住民の摩擦などの問題だけでなく、民泊というシステムをどう捉え、どう成長させていくのかという問題です。

次回は、民泊の問題点について解説します。

#1 なぜ民泊が必要なの?
#2 民泊の問題点は改善できるの?
#3 民泊を規制する地方公共団体の条例は法律と対立する?
#4 P2P型には、B2C型の民泊にはない魅力がある?
#5 日本に民泊は定着する?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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