自分にとっての「金融の健全な状態」を考え、投資の第一歩を
投資と賢く付き合うのは、どのような金融の状態が自分にとって一番健全なのかを見極め、専門家と将来像を共有することが大事です。体重に例えるなら、何cmの人は何kgがベストといった目安はBMIで明確に出せますが、「この体重にまで減らそうとすると、調子が悪くなる」といった個人差もあります。医師は標準体重を単に守れというのではなく、個々の事情を聞いたうえで、専門性を踏まえてアドバイスをくれるはずです。逆に専門家は、たくさんのデータから何がベストとされているかは言えますが、「それだと調子が悪い」といった事情は、患者が言わなければわかりません。自分にとって一番良い状態に持っていくには対話が大切なのです。
結局のところ、投資は自己責任です。誰かの言いなりになったとしても、株価が暴落して損をするのは自分です。だから専門家と会話ができる程度に、あと非道な営業マンを察知できるぐらいには、金融リテラシーを身につけてほしいです。
では、いい営業マンをどのように見定めたらいいのでしょうか。アメリカでは多くの指南情報が出ていますが、それによると大きくは三つ挙げられています。一つめは、金融専門家としての能力。営業経験年数や資格だけでなく、きちんと手数料の説明をするかなど、専門家としての倫理観を持っているかもチェックするべきです。二つめは、顧客の属性に対する専門性。資産を相続した二代目中小企業オーナーと上場企業の役員、それぞれに同じアドバイスをするようでは、顧客本位とは言えません。これに対しては、「自分と同じような属性のお客様がどれくらいいるか」「自分と同じようなお客様がいたら、どんなアドバイスをするか」などを訊ねてみるといいでしょう。あとは同業者や友達など属性の近い人に紹介してもらうのもおすすめです。三つめは、相性です。どれほど優秀でも、自分がその気にならなければ仕方ありません。よき営業マンとは、従来は「儲けさせてくれる人」でしたが、最新の研究結果によりますと、「顧客をエンゲージさせる人」、つまり「自ら金融に関わる気にさせる人」だという結果が出ています。
アメリカには、「お金のために働いてはいけない。自分のためにお金を働かせよう」という言葉があります。投資をすることで、お金がお金を稼いでくれる仕組みを作るべきだということです。そこに関わる担当者とは、長年の付き合いになりますし、相続なども絡んできたら子供も担当してもらうことになるかもしれません。にもかかわらず、「レストラン探しほどの時間もかけず、なぜ安易に相手を選ぶのか」と言っているアメリカの専門家もいます。本来であれば他人に最も知られたくないお金のことを開示しなければいけない相手なので、すぐにいい人が見つかると思ってはいけません。それこそ就活や人生の伴侶を選ぶときのように、手間暇を惜しまず時間をかけて探してください。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。