明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

150兆円もの余剰金が出る年金制度は、世界でも日本だけ

現在、私たち国民が払う保険料によって、年金の原資はどんどん増えていっている状況です。その額はすでに150兆円にも達しています。これは、将来、現役世代が減り、高齢者が増えたときに給付に使うためといわれています。しかし、150兆円もの余剰金が出るほどの保険料を徴収する必要があるのでしょうか。いまの年金給付額をまかなえるだけの保険料で、なぜダメなのでしょう。確かに、20年後は1.2人の現役世代が1人の高齢者を支えるといわれていますが、そのときには、それに必要な保険料にすれば良いのではないでしょうか。それでは保険料が大幅にアップすると思う人もいるでしょうが、私の試算では、第2号被保険者の個人負担ベースで、11〜12%でまかなえる計算です。現在は約9.1%ですから、金額にして約1万円くらいのアップです。つまり、余剰金を当てにしなくても過大な負担になることはないのです。すると、いま9.1%も徴収する必要はなく、保険料はもっと抑えられるのです。このままであれば、余剰金はさらに増えつづけ、300〜400兆円になる計画です。世界を見ても、これほどの余剰金が出るような保険料を設定している国は、日本だけなのです。

さらに、これほどのお金をどのように運用しているのかというと、150兆円のうち、60兆円前後は国債で運用されているのです。おかしくないでしょうか。国債の元利金を払うのは国民です。国民から集めたお金で、国民が支払う債券を買っているのです。あまりにもバカげた話です。例えば、カナダなどでは、国民から集めた資金で自国の国債を買うことは禁止されています。これが、常識的な考えではないでしょうか。

ところが日本では、こうした仕組みがあまり知らされず、議論にもなっていません。単純に、余剰金を積み立てているから日本の年金は安心だ、破綻しない。だから、余剰金がなくなると破綻する、とマスコミや一部の学者までもが言います。そんなことはありません。余剰金がなくても、年金は破綻しません。むしろ、まるで余剰金をつくらなくてはいけないような仕組みが、日本の年金制度をおかしくしているのです。

次回は、公的年金制度の問題点をさらに見ていきます。

#1 そもそも公的年金の仕組みってどうなっているの?
#2 年金保険料は払い損になる?
#3 日本の年金制度は破綻する?
#4 年金の資金は余っているの?
#5 年金の余剰金は増えるのに給付額は減る?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

連載コラムの関連記事

世代間のギャップこそ新時代へのヒントにしよう

2020.8.6

世代間のギャップこそ新時代へのヒントにしよう

  • 明治大学 国際日本学部 特任教授
  • 沼田 優子
世代や知識を問わず、様々な人の話を聞いてみよう

2020.7.30

世代や知識を問わず、様々な人の話を聞いてみよう

  • 明治大学 農学部 専任講師
  • 瀬戸 義哉
メモを取るのをやめて、思考を突き詰めてみよう

2020.7.27

メモを取るのをやめて、思考を突き詰めてみよう

  • 明治大学 総合数理学部 教授
  • 小松 孝徳
#5 私たちにできることとは?

2020.7.17

#5 私たちにできることとは?

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 塚本 一郎
疑問や課題をメモにして整理し、可視化しよう

2020.7.16

疑問や課題をメモにして整理し、可視化しよう

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 原田 将

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.08.05

人口変動と人びとの歴史を結わえること

2020.07.29

お金について学ばないことで失う機会は大きい

2020.07.22

人類の危機を救う植物の秘めた力を解き明かす

2020.07.15

人の生活を助けるロボットの普及を妨げているのは、「人」である

2020.07.08

ブランド価値の向上が日本企業の課題

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

3

2020.08.05

人口変動と人びとの歴史を結わえること

4

2016.10.19

スポーツビジネスの功罪を考えると、社会の未来が見える

5

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム