医工連携により「自己満足ではないモノづくり」を目指す
私たち工学者は、人を支援するロボットを作る際に、まず使用者のどの部位をどんな機能でアシストするかを考えます。具体的なアシスト方法が決まると、図面を書き、モータや部品を選定し、制御方法を検討し、どのようにロボットに組み込むかを決め、強度や耐久性に問題はないかを検討します。
ある程度の試作が完成すると、次に健常者を対象に試験を行います。そこで有効性が検証されると、実際の患者さんなどの使用者にテストを実施し、狙いとするアシストが達成できているかどうかを評価します。
しかし、それは本当に「使用者が使いたいと思えるモノ」となっているでしょうか。工学者が作りたいものをただ作るだけになってはいないでしょうか。
実際にロボットや機器を使用する人は、まず何より今抱えている身体的な問題を解決したいと思っています。足腰が痛いから病院に行くのであり、その痛みを治したいためにロボットや機器を使うことを検討するのです。また、ロボットだったらなんでもよいわけでなく、見た目や装着感、価格、何より利用者ひとりひとりの生活環境と合致することで、初めてそのロボットを使いたいと思うのではないでしょうか。
工学者が「作りたいものを作る」といった自己満足にならないためにも、私は使用者のこれからの生活も考えた、様々な視点からのモノづくりをすることこそが、本当に必要とされるモノづくりではないかと考えています。
そのため、私たちとしては開発段階から病院や看護師等と連携し、医工連携によるモノづくりを進めており、私自身も工学者の考えだけにならないように、現在、医学生として大学院で学んでいます。
医学生としては、整形外科学やリハビリテーション学を専攻しており、機能解剖学の観点から人の仕組みを勉強しています。また実際に解剖実習も行いました。これらの知見を活かし、これからも本当に必要とされるモノづくりを進めていきたいと思っています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。