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2025.06.19

工学×医学で“本当に使いたいと思える”デバイスを開発する

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インソール型デバイスで「QOLを高める歩き方」に

 高齢者の転倒は、医療及びリハビリテーション分野において喫緊の課題とされています。骨折や寝たきりの原因となり、QOLの低下を引き起こす要因となるからです。

 しかし、歩行補助のためのパワーアシストロボットを外出時に装着することに抵抗を感じる人も多いことから、より目立たず、実用的な方法として、私たちは靴の中に装着できるインソール型のデバイスを考案しました。

 そもそも、QOLを持続的に高めるためには「歩く」ことが非常に重要だということがわかっていますが、高齢者になると少し歩くだけでも膝が痛くなってしまう方が多いという現状があります。その原因のひとつとして、筋力の低下で正常な歩行姿勢がとれていないという問題があると言われています。

 例えば、普段履いている靴底の内側や外側だけが擦り減っている場合、それは足部の「内反」や「外反」という状態であり、異常な歩行姿勢を示しています。本来、足の中心で接地することで吸収されるはずの衝撃が、ダイレクトに膝にかかることで膝関節の変性、変形、痛みにつながるとされています。

 若いうちは筋力があるので痛みを感じない方も多いですが、ご年配の方になると異常歩行が原因で変形性膝関節症を発症し、歩くこと自体が困難になるケースもあります。

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インソール型デバイスで「QOLを高める歩き方」に

 この課題を解決するため、私たちが開発しているのが、踵が接地する際に常に中央の位置に誘導されるよう、歩行状態にあわせて自動で傾斜させるインソール型のデバイスです。足が正しい角度で接地することで、体重が体に均等にかかる姿勢に矯正され、結果的に異常歩行をなくし、膝の痛みを減少ないしは消失させます。

 このデバイスは、お年寄りの方のQOL向上だけでなく、若い方の予防にも効果があると考えています。現在、他大学の医学部と提携して臨床実験を行いながら、企業とも連携してコンパクト化や電源問題の解消などの実用化に向け、研究を進めているところです。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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