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無限の可能性を秘めた物質「水」とは

深澤 倫子 深澤 倫子 明治大学 理工学部 教授

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水は、地球上や宇宙空間、生体内等に大量に存在する身近な物質として知られていますが、科学的に見ると未だ解明されていない様々な性質を持つ可能性を秘めた物質なのです。水が関わる様々な物質を対象として「水の物理化学」の研究を進めている研究室が、本学にあります。

宇宙空間における物質進化の鍵【アモルファス氷】

深澤 倫子 物質の状態は主に固体、液体、気体という三つの状態に分類され、水の場合にはこの三つの状態のことを、それぞれ氷、水、水蒸気とよびます。水の状態は温度や圧力に応じて変化しますが、条件変化の過程や履歴、共存する物質を変えると、多様な構造を取り、様々な性質を示します。人類は、未だその全容を解明できてはいないのです。

 宇宙空間に多量に存在する水は、生命の発生源の一つとして注目されています。条件に応じた水の構造・物性変化の全容を完全に解明することができたら、宇宙空間における物質進化を理解する鍵が見つかるかもしれないのです。

 宇宙の星間空間には、星間分子雲とよばれる分子の密度が高い領域があります。星間分子雲では、浮遊する鉱物微粒子(宇宙塵)上に水が凝集し、アモルファス氷とよばれる固体になります。

 私たちが冷凍庫で作る氷は、水分子が六角形に規則正しく配列した結晶です。池や湖などにできる天然の氷も、上空から降る雪も、原子・分子レベルでみると同じ構造の結晶です。ところが、水分子が規則正しく配列せず、不規則な構造のまま凍ってしまった状態の氷もあります。この氷がアモルファス氷です。

 アモルファス氷は、宇宙の星間分子雲のように約 100 K(ケルビン)(-173℃)以下の非常に低温の領域で、水が気体の状態から直接固体になることにより生成します。

 星間分子雲で生成したアモルファス氷は、炭素や窒素、水素などの原子を吸着します。吸着した原子は、表面反応や光反応等を経て様々な分子に進化します。

 星間分子雲に漂うアモルファス氷に覆われた鉱物微粒子は、凝集や衝突等、様々な過程を経て成長し、やがて地球のような天体になると考えられています。

 宇宙空間に存在するアモルファス氷を採取して、地球上に持って来ることは非常に難しいのですが、アモルファス氷を実験室で人工的に作ることはできます。

 私たちは、宇宙空間のアモルファス氷の観測データや、人工のアモルファス氷の実験データを基に、アモルファス氷および共存する鉱物の構造と物性を解き明かそうとする研究を進めています。

 この研究により、生命の起源や地球の形成過程を知る鍵が見つかるかもしれないと考えています。

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