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2021.10.29

無限の可能性を秘めた物質「水」とは

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地球の環境とエネルギーの鍵【クラスレートハイドレート】

 近年、次世代のエネルギー資源として注目されているメタンハイドレートも、実は氷の一種です。

 先にも述べたように、一般的な氷は水分子が六角形に規則正しく配列した結晶ですが、水分子以外の分子が共存する場合には、温度や圧力の条件によって、水分子が立体のカゴのような形を作ります。この結晶をクラスレートハイドレートとよびます。

 クラスレートハイドレートは、水分子が作る隙間の大きいカゴ状の構造の中に様々な分子を取り込むことができます。

 自然界には、様々なところに天然のクラスレートハイドレートが存在します。例えば、宇宙には、彗星核やタイタン等に二酸化炭素やメタンのクラスレートハイドレートが存在すると考えられています。

 天然のクラスレートハイドレートは、地球上にも存在します。南極大陸に存在する空気を含むクラスレートハイドレート(空気ハイドレート)もその一つです。南極大陸には、氷床とよばれる、厚さが4000メートルにも達する巨大な氷の塊があります。空気ハイドレートは、この氷床の中に存在するのです。

 南極大陸の氷床は、過去に降り積もった雪でできています。表面から深くなるほど過去にさかのぼり、一番深いところでは約70万年前にもおよぶこと分かっています。氷床中の空気ハイドレートは過去の大気を取り込んでいるため、過去の地球の環境変動についての貴重な情報源となります。

 クラスレートハイドレートは、海底にも存在します。海底の泥土に積み重なった植物や生物の死骸などの有機物から生じるメタンを取り込んだクラスレートハイドレートが、メタンハイドレートです。

 メタンハイドレートは日本近海にも大量に存在することが確認されており、石油や石炭などの資源が乏しい日本にとって、有効な資源になることが期待されているのです。しかし、実用化にあたっては様々な課題があります。

 クラスレートハイドレートの物性や生成過程を解明することにより、メタンハイドレートの実用化に繋がる緒が見つかるかもしれません。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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