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人の生活を助けるロボットの普及を妨げているのは、「人」である

小松 孝徳 小松 孝徳 明治大学 総合数理学部 教授

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ヒューマノイドロボット(人型ロボット)が人に代わって様々な雑事をこなしてくれる社会は、私たちにとってひとつの夢ですが、なかなか実現しません。それは、工学的な技術やアプリケーションの問題だけでなく、実は、私たち自身が大きな壁になっていると考えられます。

人は心の底ではロボットを受け入れていない

小松 孝徳 現代では、産業用ロボットはなくてはならないものになっていますし、自動運転の車などにも大きな期待が寄せられています。

 一方で、長年、人の生活空間への普及が試みられてきたヒューマノイドロボットは、いままで何度も話題になることはありましたが、普及は進んでいません。

 しかし、労働力人口が急激に減少している日本社会では、今後、家庭で家事や雑務をこなしてくれるロボットのニーズが高まることも考えられます。それに応えることは重要な課題になってくると思います。

 そもそも、なぜ、人の生活空間へのロボットの普及は進まないのか。その理由として、技術的な問題や、キラーアプリケーションを見つけられないことがよく挙げられます。

 しかし、一番大きな理由は、人はロボットを心の底から受け入れていないという、人のロボットに対する認識に起因すると、私は考えています。

 つまり、ロボットにまつわるテクノロジーの発展とは全く別次元の、ロボットを受け入れる人の心理に、普及を妨げている要因があるということです。

 私も、長年、ロボット開発の研究活動に従事してきましたが、むしろ、人の心理の重要性にもっと目を向ける必要があると考え、現在はその研究を進めています。

 実際、ロボットに対する人の心理の研究は昔からあります。そのひとつが「不気味の谷」問題です。

 これは、ロボットが人らしくなると、人はどのように感じるのかを調査したデータを、ロボットに対する人の好感度を縦軸にとり、人らしさの度合いを横軸にとったグラフで表した結果です。

 まず、人らしさがまったくない産業用ロボットなどの場合は好感度はほとんどありません。そこから、ロボットが人らしくなるにつれ好感度はどんどん上がっていきます。

 ところが、人らしさがあるレベルに達すると、好感度は急激に落ち込み、産業用ロボット以下にまで落ち込んでから、100%人そのものに向かって、また急激に上昇する線が描かれるのです。この急激な谷型線が「不気味の谷」と言われるものです。

 つまり、ロボットがリアルな人に近づくほど、人は、実際の人との差に敏感になり、そこに違和感を覚えると、好感度どころかマイナス、つまり不気味さや気持ち悪さを感じるということです。

 例えば、ヌイグルミなどでも、デフォルメされたデザインのものには多くの人がかわいらしさや親しみを覚えますが、中途半端に実物に似たデザインでは、気持ち悪さを感じることがあるのと同じです。

 また、ロボットの人らしさの問題は、人に不気味さを感じさせるだけではありません。

 例えば、人がヒューマノイドロボットに会うと、人と同じような機能を期待します。ところが、期待外れだとわかると評価はガクンッと下がり、失望になってしまいます。

 それに対して、玩具のようであったり、ただの機械の箱のような外観のロボットに対しては期待値は低く、そのため、そんなことができるのか、と思われるような機能に触れると、評価がグッと上がるのです。

 これは、「適応ギャップ仮説」と言います。つまり、ヒューマノイドの外観にすることで人の期待値のハードルが上がり、機能が不十分と思われると、負の適応ギャップに陥ってしまうのです。

 こうした人の心の問題を研究することで、人の生活空間へのロボットの普及を図るうえで、より有効な方法や、的確なロボット開発も考えられるのではないかと、考えています。

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