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人の生活を助けるロボットの普及を妨げているのは、「人」である

明治大学 総合数理学部 教授 小松 孝徳

人とロボットでは求められることが違う

 では、そもそも、人はロボットを何者と認識しているのか。私たちは、その探求のために、哲学的な思考実験にロボットを登場させる方法で調査を行っています。

 そのひとつが「トロッコ問題」です。ご存じの方も多いと思いますが、トロッコが制御不能になって猛スピードで走る線路の先に5人の人がいて、このままでは轢き殺されてしまいます。

 しかし、線路の分岐器があり、それを操作すればトロッコの進路を変えられます。でも、変えた進路の先にも人が1人いるのです。

 この状況で、分岐器の側に人がいる場合と、ロボットがいる場合を想定し、被験者に、人の行動と、ロボットの行動を評価してもらうのです。

 すると、人の場合は、分岐器を操作する選択を非難する答えが多いのに対して、ロボットの場合は、分岐器を操作しない選択を非難する答えが多い結果になるのです。

 つまり、人が分岐器を操作しないことは5人を見殺しにすることになりますが、それはどうしようもない状況であり、逆に、分岐器を操作することは、5人を助けるために1人を殺す選択をしたと見なされ、それは非難の対象になるわけです。

 ところが、ロボットの場合は、まったく逆で、なにもアクションせずに5人を見殺しにすることが非難の対象となるのです。この結果は、人は、ロボットを人とは別のものと見ていることを明らかにしています。

 実は、「トロッコ問題」は非常にクリティカルな命題ですが、もっとライトな、日常生活で起こる課題を設定しても、人とロボットでは求められることが違うという結果が出ます。

 さらに、この結果は、日本でもアメリカでもほとんど変わりません。つまり、文化とか宗教観による差はないとみて良いのです。

 つまり、ロボットに対する認識の問題とは、人類の心の底にある根深い部分の問題なのかもしれないのです。

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