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あなたの理想顔のイメージを簡単に画像化できる

荒川 薫 荒川 薫 明治大学 総合数理学部 教授

カスタマイズのもの作りは地球にも優しい

 将来的には、既存の化粧品の中から適したものを勧めるのではなく、デジタルファブリケーション技術がさらに進展すれば、その場で、最適な化粧品を1個作ることが可能になると思います。冒頭でも述べたように、目指すのは、一人ひとりのニーズに対応するもの作りを実現して、きめ細かいサービスを行い、人々の生活の質の向上を図ることです。そうしたもの作りのためには、ものの情報をすべて数値化することが必要で、「美顔化システム」もそのためのシステムですが、それと並んで、その数値を基にして、ものを作り出していく3Dプリンターやレーザー加工機などのデジタルファブリケーション技術が必要です。現在は、まだ、カスタマイズしたものを1個作ることは、大量生産に比べると割高にならざるを得ませんが、デジタル製造技術が進展し、私たちの身近なものになっていくと、むしろ、非常に安く、良いものができるようになるはずです。

 さらに、こうした技術の発展は、私たち一人ひとりの満足度を高めるだけでなく、地球資源の保護にも繋がるものだと考えます。というのは、産業革命以降、企業が万人向けのものを大量生産し、販売することが社会の仕組みになっていました。それにより、生産コストを下げることができ、多くの人にものが行き渡ってきたのです。その反面、万人向けの大量生産を行えば、余るものや、消費者に好まれず売れ残るものも出てきます。つまり、大量生産は一方で、大量廃棄も生んできたのです。それは地球資源の無駄遣いであるだけでなく、環境汚染問題にもなっています。例えば、ファストファッション(流行に対応した低価格衣料品)は短いサイクルで次々に大量生産されますが、売れ残りや、ユーザーに飽きられて捨てられることも多く、大量に廃棄され山積みになった服から染み出した染料が、土壌を汚染することが問題になっています。地球を汚染している理由の第2位は、廃棄された服といわれているのです。個別に必要なものを作ることができれば、こうした問題の解決にも繋がるでしょう。実際、私は、私の開発したデザイン化システムでオリジナルのボトルを作りましたが、自分で作ったボトルには愛着が湧き、大事にしています。滅多なことで捨てることはないでしょう。そうした思いは、だれでも同じだと思います。様々な製品でオリジナルのもの作りが可能になれば、必ず、地球資源の保護にも繋がっていくと思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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