期待できる用途の広がりと精度の向上
化粧品メーカーは、商品販売の店頭のパソコンにこの「美顔化システム」を組込み、顧客が選び出した理想顔を実現するための化粧品を勧める形で、このシステムの実用化を図ろうとしています。特に、日本を訪れるインバウンドに日本の化粧品の人気は高いのですが、彼らの要望を正確に捉え、それに適した化粧品を販売することは大変難しいと言います。そこで、この「美顔化システム」は「ボーダレス・コミュニケーションツール」として機能します。世界には様々な肌の色がありますが、このシステムは人種ごとにシステムを変える必要はなく、どんな肌の色の人もカバーすることが可能です。現在は、アジア系の人と白人系の人が利用可能ですが、黒人系の人も利用できるようにすることができます。
また、こうしたシステムが多くの人に使用されるようになると、その履歴がデータとして蓄積されていきます。例えば、「美顔化システム」を100万人が使えば、その結果が100万個のデータとなります。すると、400万通りの顔画像から最初に表示するサンプルの10個をランダムに設定するのではなく、100万個のデータを分析し、一定の予測から表示することが可能となり、対話型進化計算の精度を上げることができます。また、これまでの実験でも、世代によって理想顔に傾向の違いがあることがわかっています。システムの開始時に年齢の入力などを加えれば、さらに表示サンプルの精度を高めることができます。「美顔化システム」に限らず、一般の人のオリジナルデザインを支援するシステムの実用化において、こうしたビッグデータの活用は、非常に有効になっていくと思います。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。