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「年老いていく」日本に対して、アフリカは世界で「一番若い大陸」

明治大学 国際日本学部 教授 溝辺 泰雄

近年、アフリカ各国の著しい経済成長が、日本でもよく報道されるようになりました。ところが、アフリカは日本から遠く、関わりも少なかったため、関心は高くないようです。しかし、ここ数年、官民を挙げて関わっていこうという動きが活発になっています。「一番若い大陸」といわれるアフリカは、私たち日本人にとっても、将来の重要なパートナーかもしれません。

「アフリカ分割」による混乱からようやく立ち直りはじめたアフリカ

溝辺 泰雄 私の専門は、サハラ砂漠よりも南のサブサハラアフリカ(サハラ以南アフリカ)と呼ばれる地域ですが、この地域の経済成長が徐々に上向きになってくるのは、2000年代に入った頃からです。サハラ以南アフリカ全体のGDPは5%前後で成長しています。もっとも、この数字はあくまでも平均値ですので、それよりも高い成長率を誇る国もあれば、伸び悩んでいる国も存在しています。そもそもアフリカ諸国が開発途上国であったのは、国民に意欲や向上心が稀薄だからだ、と思う人も多いでしょう。しかし、その「国民としての意欲や向上心」が高まらなかったのには、そうした状況を生まざるを得なかった歴史的背景があるのです。

 アフリカにヨーロッパ人が進出を始めたのは「大航海時代」が始まった15世紀半ば以降です。主に大西洋沿岸地域で展開された奴隷貿易の時代を経て、19世紀には、ヨーロッパの列強がアフリカのほぼ全土を切り取り植民地とした、いわゆる「アフリカ分割」が起きます。そしてアフリカの各地域が独立するのは、第2次世界大戦後の20世紀半ば以降です。植民地からの独立というと、以前からあった国が植民地とされ、それが独立したように思われがちですが、アフリカの場合はそうではありません。20世紀半ば以降に独立したアフリカ諸国の国境線は植民地統治期にヨーロッパ人によって一方的に画定された境界線をそのまま引き継いだものがほとんどでした。その結果、言語や慣習が異なる人々が、突然同じ「国民」として扱われるようになったり、同じ言葉を話す人々が複数の「国」に分断されたりすることも珍しくありませんでした。例えば、西アフリカのギニア湾岸に暮らすエウェ人は、ガーナ、トーゴ、ベナンの3ヵ国に分断されて暮らすことになりました。ガーナは旧イギリス領なので公用語は英語で、トーゴとベナンは旧フランス領なので公用語はフランス語です。同じ文化慣習を共有する人々が「アフリカ分割」によって全く異なる境遇に置かれることになったのです。そのような状況で作られた「国」では、選挙で選ばれた人物を自分たちの代表とは思えないケースも出てきます。そして、その代表者も自らの出身母体や親族を優遇するネポティズムに傾き、異なる民族を抑圧し、独裁者化します。その結果、国内には対立の感情が高まり、ちょうど当時は東西冷戦期の真っ只中であったことも相まって、米ソや旧宗主国などによる露骨な介入によって、紛争や内戦が頻発するに至りました。こうした状況では、国民がひとつにまとまることも、国民一人ひとりが意欲や向上心をもつことも難しくなってしまったのです。

 こうした状況に変化が起き始めたのは、独立して半世紀ほどが経ち、独立後に生まれた人が二世代から三世代目になりつつあり、ようやく民族を越えて、ひとつの国民としての意識やアイデンティティが形成され始めたこと。そして、1989年に東西冷戦が終焉し、アフリカ各国の独裁政権をバックアップしていた構造が崩壊したこと。さらに、ICT技術の発達により、世界中の情報に手軽にアクセスできるようになり、国民に民主化の意識が浸透してきたことなどが挙げられます。実際、かつては多かった長期独裁政権の国は減り、選挙による民主主義的な手続きで、混乱もなく政権交代を果たす国も増えてきています。こうした社会状況の変化が、各国の経済成長の背景にあります。つまり、突発的な何かの要因であったり、バブルのような現象で経済が成長しているわけではなく、アフリカ各国は、しっかりとした経済成長を遂げ始めている、といえると思います。

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