明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

「年老いていく」日本に対して、アフリカは世界で「一番若い大陸」

溝辺 泰雄 溝辺 泰雄 明治大学 国際日本学部 教授

成長を支える「人口ボーナス期」に入るアフリカ

 さらに、アフリカ各国には、今後の経済成長を支える大きな要因があります。そのひとつが、いわゆる労働人口の増加です。現在、世界人口は約75億で、サハラ以南アフリカの人口は約10億です。これが2050年には、世界人口が98億で、サハラ以南が21億となると予測されています。日本の人口が1億を切るだろうといわれている今世紀半ば、世界の5人に1人はサハラ以南アフリカ出身者となるわけです。当然、生産年齢人口といわれる15歳から64歳の人口も増加しつつあり、サハラ以南アフリカ各国は、被扶養人口層が相対的に減少する「人口ボーナス期」に入り、2040年くらいにピークを迎えると考えられます。ちなみに、日本の人口ボーナス期は1964年くらいから始まり、昭和の高度成長を支え、バブルが崩壊した後の1990年代半ばに終わっています。

 アフリカの人口動態が好転し始めたのは、経済発展につれて都市部を中心に生活水準が上がってきたことや、徐々に女性の社会進出も進んできていることなどが挙げられます。多産多死の状況が少産少死の方向へと徐々に変わり始め、それが経済の成長にも貢献するという好循環に繋がりつつあります。さらに、経済の成長と人口の増加につれて、各国で都市化が進展しています。サハラ以南アフリカで最も人口の多い都市はナイジェリアのラゴスですが、その人口はすでに1700万人を超えており、西アフリカにおける商業の中心地になっています。他にも、人口100万以上の都市はサハラ以南アフリカに30以上あるともいわれます。都市は生産性が高く、その国の経済を支えるとともに、地方に比べて個人の労働賃金が高く、巨大な消費市場となります。さらに、収入の増加は教育へのアクセスを広げ、高等教育を受ける若者の増加へと繋がっています。

 つまり、日本などが少子高齢化で国の成長や活気が鈍るといわれるのに対して、サハラ以南アフリカは、社会が安定し、今後も人口増加が続くのに加え、経済成長を支える原動力として、日本にはない豊富な地下資源、石油や天然ガス、金、銀、銅、ダイヤモンド、ニッケル、プラチナ、マンガン、レアアースなどを持っているのです。さらに、いままで以上に高等教育を受けて能力を高める若年層が、もはや意欲や向上心を削がれることなく、ICT分野をはじめとして、様々なイノベーションや社会改革を推進していく可能性が見込めるのです。アメリカのオバマ前大統領が、人類発祥の地で、地質学的にも古いアフリカを、「一番若い大陸」と言ったのも頷けます。

国際の関連記事

「フランス語は戦利品」という植民地だったアルジェリアの柔軟さ

2021.8.18

「フランス語は戦利品」という植民地だったアルジェリアの柔軟さ

  • 明治大学 国際日本学部 准教授
  • 鵜戸 聡
日本の「多文化共生」という概念を見直す時が来ている

2021.7.21

日本の「多文化共生」という概念を見直す時が来ている

  • 明治大学 文学部 専任講師
  • 昔農 英明
K-POP世代が日韓相互理解の架け橋になる

2021.7.7

K-POP世代が日韓相互理解の架け橋になる

  • 明治大学 商学部 教授
  • 李 英美
ヨーロッパに学ぶ日本の「移民問題」

2021.6.30

ヨーロッパに学ぶ日本の「移民問題」

  • 明治大学 文学部 教授
  • 荒又 美陽
アメリカに、キノコ雲をマスコットにする高校があるのはなぜか?

2021.4.28

アメリカに、キノコ雲をマスコットにする高校があるのはなぜか?

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 石山 徳子

新着記事

2021.09.22

考古学の新たなロマンを生み出す数理科学

2021.09.16

挑戦することで自らも社会も“進化”させよう

2021.09.15

プロ野球の熱狂は人になにをもたらすのか

2021.09.09

人生を通して、夢中になるものを見つけよう

2021.09.08

音楽が魅力的で面白いのは、音楽は複数形だから

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2021.09.22

考古学の新たなロマンを生み出す数理科学

3

2019.10.23

渋沢栄一に学ぶ、多様な立場、多様な経験を活かす生き方

4

2018.01.26

#3 日本国憲法は「押しつけられた憲法」か?

5

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

リレーコラム