明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

環境リスクにどう向き合うか ―リスク・デモクラシーの提言―

明治大学 文学部 教授 寺田 良一

「問題構築」の重要性

寺田良一教授 私の専門である環境社会学では、環境リスクや環境被害、それに伴う環境運動・NPO論等を研究の対象としている。欧米の環境運動・NPOの調査を始めた80年代、社会的サポートを受け、市民権を得て大規模に展開している欧米の環境運動の姿に大きな驚きがあった。それ以上に、日本ではまだほとんど取り組まれていなかったダイオキシンやアスベスト、原発がはらむ、潜在的なリスクに対して先んじて対応していくという姿勢に目を見張ったものである。リスクを放置し、問題が顕在化しないと対応しない日本とは大きな違いを感じたのである。
 現在、環境を巡る論議の中で、地球温暖化や自然破壊等の問題は緊急課題としてすっかり市民権を得ているといえるだろう。しかし、遺伝子組み換えや環境ホルモンのように、まだ評価が定まっていない問題も数多くある。かつての水俣病のような産業公害の健康被害は、誰の目にもその深刻さが明らかだった。しかし昨今の環境問題は、より長期的・潜在的な「環境リスク」と呼ぶべきものが多くなっており、何が重要な環境問題かを市民が認識することは、むしろ難しくなってきたともいえる。
 そこで重要なのが「問題の構築」だ。社会学一般でいう「問題構築(社会構築主義)」とは、社会に問題が山積する中で、市民が納得するような問題の枠組みが提起され受け入れられて、初めて「社会問題」になるという考え方である。たとえば「セクハラ」は今日ではれっきとした社会問題であるが、「セクシャル・ハラスメント」として問題の枠組みが受け入れられる以前は、「低劣で不快な言動」でしかなかったのである。環境問題がより潜在的なリスク化している今日、市民や科学者、環境NPOなどの問題提起によって、どれがなぜ重大な問題なのかという科学的根拠や政策的優先順位を提起する必要が出てきているのである。

国際の関連記事

日本企業のアジア進出は、日本人のあり方を見直すきっかけになる

2019.9.11

日本企業のアジア進出は、日本人のあり方を見直すきっかけになる

  • 明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 准教授
  • 藤岡 資正
アフリカへの協力から日本経済の将来を考える

2019.8.28

アフリカへの協力から日本経済の将来を考える

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授
  • 島田 剛

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

新聞広告連動企画

新着記事

2019.11.13

音声合成技術によって「人間を超える声」が生まれる!?

2019.11.06

SDGsは、企業の社会における存在意義を問うもの

2019.10.30

再生医療の進歩にも繋がる、独自の人工骨開発技術がある

2019.10.23

渋沢栄一に学ぶ、多様な立場、多様な経験を活かす生き方

2019.10.16

増える、ひとり暮らしの高齢者が楽しい生活をおくるには

人気記事ランキング

1

2019.11.13

音声合成技術によって「人間を超える声」が生まれる!?

2

2019.11.06

SDGsは、企業の社会における存在意義を問うもの

3

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

4

2018.05.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

5

2017.03.15

「沖縄振興予算」という呼称が、誤解を招いている

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム