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移民をスケープゴートにするトランプ政権に改革は期待できるか?

林 義勝 林 義勝 明治大学 文学部 教授

排外主義や保守主義を掲げるトランプ政権は、世界の潮流であるグローバル化、リベラル化の流れを押し止める、逆行的な政権として日本では受止められがちですが、アメリカの歴史を考察すると、それが決して特異なものではないことがわかります。そして、“トランプ後”も見えてきます。

多様化に反発する人たちの心をつかんだトランプ大統領のスローガン

林 義勝 トランプ大統領が選挙中からスローガンとして掲げていたのが「Make America Great Again!」ですが、この「偉大なアメリカ」とは何を指すのか。おそらく、彼のイメージしている最も偉大なアメリカとは、1950年代のことだろうと思います。ヨーロッパもアジアも、第2次世界大戦からの復興の途上にあり、アメリカだけが、政治的にも軍事的にも経済的にも、超大国として最も力を誇っていた時代です。国内では、白人の中流階級の家庭が非常に豊かな生活を送っていました。ところが、1960年代に入ると、白人中心の価値観が少しずつ崩れ始めます。その大きな要因が、いわゆる公民権運動です。日本では、キング牧師が「I Have a Dream(私には夢がある)」の演説を行った1963年の20万人のワシントン大行進や、1964年の公民権法の成立がよく知られていますが、実は1950年代からその動きはありました。例えば、1954年の「ブラウン対教育委員会事件」。この裁判によって、公立学校では黒人と白人の学生を分離することを認めていた最高裁の判決が違憲とされました。また、1955年には、バスの席を白人に譲ることを拒んだローザ・パークス事件に端を発したバス・ボイコット運動が起き、公民権運動につながっていきます。こうした様々な活動によって、黒人やマイノリティといわれている人たちの主張や権利が認められていったのです。さらに、1973年には、女性の妊娠中絶に関するロー対ウェイド事件といわれる裁判が起き、妊娠中絶を選択する女性の権利を認める判決が出るなど、女性の権利や社会進出も進んでいったのです。

 しかし、一方で、こうした動きに対して反発する人たちもいます。その典型が、WASPといわれるプロテスタントのアングロ・サクソン白人至上主義者や、秘密結社のKKKです。彼らはマイノリティの権利獲得運動、フェミニズム、イスラム教などに対して、激しく反発します。こうした過激な人たちは表面的にはごく一部ですが、アメリカ人の中には、アメリカ建国の主体となったアングロ・サクソンのプロテスタントの価値観をコアとする考えがあり、その価値観を大切にする保守的な考えの人たちが多いことも事実です。また、社会的に閉塞感が強まっている中で、トランプ大統領の掲げた「Make America Great Again!」は、こうした人たちの心をつかむスローガンだったといえます。

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