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「日韓併合」に口をつぐむ日本人でいたくはない

大畑 裕嗣 大畑 裕嗣 明治大学 文学部 教授

朝鮮半島の南北首脳会談、米朝首脳会談が続き、朝鮮半島の非核化に道筋がつけられ、今後、日本と韓国、北朝鮮との関係も変わってくることが予想されます。しかし、本当に良好な関係に発展させていくためには、まず、私たちが隣国に対する正しい知識をもつことが必要です。

韓国民主化の市民運動を進めたのは、左派と右派の中間層

大畑 裕嗣 日韓関係に限らず、私たちは自分の立場からだけで相手のことを考えがちです。逆に、相手の国がどう見ているのか、ということも含めて考えることが、お互いの理解を深める上で欠かせません。まして、韓国や北朝鮮は隣国であり、様々な交流や衝突の歴史もありました。朝鮮半島の非核化が実現に向けて動き出し、この地域に安全と平和がもたらされようとしているいまこそ、新たな関係を築いていくために、私たちは隣国のことをもっときちんと知る必要があると思います。

 韓国は、近年では、ハイテク産業が発達し、グローバリゼーションに適応した多文化共生社会が進んでいます。日本人も韓国に対してそうしたイメージをもっている人が多いと思います。しかし、1970年代は朴正煕政権による開発独裁体制でした。その朴正煕が1979年に暗殺され、1980年代になると、軍部出身の全斗煥により軍政が敷かれます。民衆の民主化運動を武力で鎮圧する光州事件なども起こりますが、1987年、後に大統領になる盧泰愚によって民主化宣言がなされ、大統領直接選挙制が導入されます。この激動の80年代末からの5年間、私は韓国に滞在し、民主化運動や市民運動を目の当たりにしました。私が感じた韓国の市民社会には、大きく2つの政治的立場の対立があります。ひとつは、共産主義は悪いという立場です。特に、1950年に始まった朝鮮戦争を通じて、実際に共産主義と対峙した人々にとっては、共産主義は同じ民族をも殺し合わせる、おそろしい敵という考えがあるのです。日本的にいえば、反共的自由主義といえます。もうひとつが、民衆を支配する独裁や軍政に対して、民衆を解放していくという立場です。日本的にいえば、マルクス主義の公式をあてはめたような形ですが、これは民衆民主主義といわれ、この立場が、南北の統一にも繋がると主張されました。この2つの立場が対立するのが、韓国の市民社会の基本的構図であったと思います。ところが、90年代以降、韓国の民主化を成熟させたのは、この2つの立場は両極端だとする中間的考えの人たちだったと思います。つまり、独裁は否定するが、だからといって共産主義になるのではなく、自分たちに適した民主的な社会をつくれば良いという考え方です。島国の日本と違い、大陸の端の半島の国という地政学的条件があるこの地域では、大陸に勃興する勢力に対して常に敏感で、それと与するのか、あるいは別の勢力と与して対抗するのか、その立場を明確にして、勝ち残らなければ生き残れなかった歴史があります。その中で、2つの立場を両極端とする中間的な立場が市民運動の中から起こり、今日の韓国の発展に繋がる民主的社会への扉を開いていったことは、逆に、曖昧であったり、中間的なものを是とする文化をもつ日本人にとっては特別なことのように思えないかもしれませんが、韓国にとっては、画期的な市民運動であったといえると思います。

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