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「日韓併合」に口をつぐむ日本人でいたくはない

明治大学 文学部 教授 大畑 裕嗣

注視していく必要がある南北統一問題

大畑 裕嗣 今回、朝鮮南北首脳会談、米朝首脳会談と進んだストーリーの中で、朝鮮半島の非核化とともに、日本では拉致問題の進展を期待し、韓国では南北統一が話題になっていましたが、会談後の日韓の主要新聞の論調を見ると、いずれも性急な結果を求める内容ではなく、具体的なことはこれからという見方で一致していました。金正恩委員長は冷静な交渉相手であり得るという観測が出てきたからかもしれません。日本も冷静に対応していくことが必要でしょう。

 一方、南北統一問題はまったく先が読めません。もともと太平洋戦争末期、朝鮮半島の北側にソ連軍が、南側にアメリカ軍が駐留したことで分断が始まりましたが、朝鮮戦争時は、戦争に勝った方が統一するという考え方でした。1953年に休戦状態になった後は、平和的統一という考え方が出てきます。1972年の南北共同声明では、同一の民族なのだから、思想、理念、制度の違いを超えて平和的に統一できるはずとし、それは南北が合意する大方針になりました。しかし、韓国では、経済力を高めてきた90年代以降、統一観に変化が出てきました。それは、西が東を吸収統一したドイツのように、南が北を吸収統一すると、様々な問題が派生することがわかってきたからです。例えば、吸収統一の前提は、北朝鮮の政権が崩壊していることですが、それは北朝鮮の生き残り策が失敗したことであり、そのような状態の国を吸収すれば、莫大なコストがかかります。そこまでして統一する必要があるのかという意識が韓国にはあります。一方、北朝鮮には、1960年に打ち出した南北連邦制、1980年にはそれを発展させた「高麗民主連邦共和国」のシナリオがあります。南北双方が体制を維持したまま、大きな括り(連邦共和国)を形成するというものです。いずれにしても、同じ民族なのだからとか、38度線をなくせば、というのは、いわば理念的な議論で、いまは現実的な問題として捉えているからこそ、統一の具体案が難しいという状態になっています。北朝鮮には豊富な資源があり、市場としても有望と韓国は見ているし、北朝鮮にとってそれは重要な交渉のカードです。体制を維持したい北朝鮮と、北朝鮮をビジネスチャンスと捉える韓国、双方の交渉と駆け引きは、日本も注視していくべきでしょう。

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