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ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

ヨーク・ジェームズ ヨーク・ジェームズ 明治大学 政治経済学部 専任講師

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近年、若年層のゲーム中毒が問題視され、その対策として、ゲーム条例などを制定する地方自治体もあります。一方で、ゲームを教育や学習に導入しようという試みもあります。私たちは、ゲームをどう捉え、どう利用していけば良いのでしょう。

ゲームの教育利用にはハードルがある

ヨーク・ジェームズ そもそも、人はゲームが好きです。世界中のどんな民族も、遊びの中から様々なゲームを生み出してきました。近年では、ビデオゲームなど、デジタル機器を使った電子ゲームが世界中に普及しています。

 あるレポートでは、人口3億2700万人のアメリカで、2億1400万人がビデオゲームのプレイ経験があると報告しています。これは、日本やヨーロッパなどでも同じような状況だと思います。

 では、なぜ、人はゲームをしたがり、夢中になるのか。一説には、人はなにかを解いたり、課題をクリアしたりすると、快感や幸福を感じるホルモンが脳に分泌されるからだと言います。

 実生活では、本当に課題をクリアしたのかわかりづらいことが多いですが、ゲームでは、ボスキャラを倒したり、次のステージに進むことなどで、それが見える化されているため、快感や幸福感が得られやすくなっているのです。

 すると、長時間、ゲームに耽ってしまう人が現れるようになります。実際、WHO(世界保健機関)は、ゲーム中毒を病気のひとつとして定義しました。日本ではゲームを制限する条例が制定されたり、中国などでは法律によってゲームを制限する状況にもなっています。

 しかし、コロナによるパンデミックによって、いわゆる巣ごもりを余儀なくされると、WHOは、ストレスを軽減する娯楽としてゲームを推奨しました。

 このことは、ゲームが、人にとって毒にも薬にもなることを示していると思います。

 そこで、有用な活用のひとつとして、ゲームを教育に応用する試みが行われています。そもそも、ゲームの本質である、なにかを解いたり、課題をクリアすることとは、要は、学びということなのですから。

 しかし、特にデジタルゲームの教育への導入は、なかなか難しいです。ハードルは主に3つあります。

 まず、社会的な問題。これは、ゲームの毒の側面に偏った見方がなされることが多いからです。

 次に、金銭的な問題。ゲームをするには、そのための端末やソフトを購入したり、続けるためには課金が発生するゲームもあります。金銭的な負担が生じるわけです。

 もうひとつが、教育的な問題です。これは、社会的な問題とリンクしていて、教員がゲームにふれないことで、ゲームに対する理解がなく、ゲームをどのように利用したら良いか、そのやり方がわからないことです。つまり、教員にゲーム・リテラシーが不足していること。そして、ゲームを活用した授業法や授業案がなく、ゲームの活用についての研修もないことが原因なのです。

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