明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

理解度を高めるのは、説明を聞くよりも、説明をすること

伊藤 貴昭 伊藤 貴昭 明治大学 文学部 准教授

>>英語版はこちら(English)

コロナ禍によって、多くの学校でオンライン授業が導入されました。しかし、早く対面授業に戻したい、という意見が多いようです。でも、学習効果を高めるという点では、学習の形態よりも、学習のやり方が重要です。そのひとつである「説明行動」の研究が、本学で進んでいます。

説明行動は自らの理解度を高める

伊藤 貴昭 私は、長年、説明行動の効果について研究してきました。

 「説明」とは、自分の知っていることを他者に伝えることなので、一般的には、上手な説明の仕方といったことに関心をもつ人が多いと思います。

 しかし、私が焦点を当ててきたのは、説明のテクニック等ではなく、説明という行動によって、説明をする人の中でどういうことが起こっているか、ということです。

 例えば、皆さんも、だれかになにかを説明していると、自分でもよくわかっていなかったことが整理されたり、ぼんやりしていたことが繋がる経験をしたことがあるのではないでしょうか。

 それは、相手に理解してもらわなければならないという状況に置かれたことで、自分自身の理解度が高まったり、新しい発見が起こるからです。

 このように、説明行動によって、自分自身の中でなんらかの変化が起こることは日常的にあるのですが、この心理的な動きを教育の分野で応用すれば、学習効果を高めることもできることになります。

 例えば、現在はコロナ禍により、大学でもオンライン授業がほとんどです。オンライン授業には、教員が講義内容を録画してアップロードし、それを学生が好きな時間に視聴するオンデマンド型と、教員が講義を直接配信し、同時に学生がそれを視聴するリアルタイム型があります。

 私は、私のオンデマンド・コンテンツを視聴した学生にアンケートを実施してみたところ、わかりやすかった、よく理解できた、という返答が多くありました。

 そこで、つづけて、そのコンテンツの内容について質問してみたところ、多くの学生がまったく答えられませんでした。すると、よくわかったと思っていたが、実は、わかっていなかったことに気がついた、というコメントがたくさん出てきたのです。

 つまり、オンデマンドの授業による学習効果は、思ったように上がっていなかったということです。

 では、こうした状況を打開して学生たちの学習効果を高めるために、どのような工夫があるのか。そのひとつが説明行動だと考えています。

キャリア・教育の関連記事

感染症を描いた文学作品は、いまの私たちにこそ響いてくる

2023.3.10

感染症を描いた文学作品は、いまの私たちにこそ響いてくる

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 池田 功
日本独自の文化はどのように形成されたのか

2023.2.8

日本独自の文化はどのように形成されたのか

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 森田 直美
「教職の危機」を超えて

2023.1.20

「教職の危機」を超えて

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授
  • 鈴木 雅博
文学散歩のおもしろさ

2022.12.21

文学散歩のおもしろさ

  • 明治大学 農学部 教授
  • 松下 浩幸
何のために科学を学ぶのか

2022.12.7

何のために科学を学ぶのか

  • 明治大学 法学部 教授
  • 勝田 忠広

新着記事

2023.03.23

子どもを持って実感した、生き方を選べる大切さ

2023.03.22

仮想実験室で前人未到の発見へ

2023.03.22

AIを使えばだれでも名画を生み出せる?

2023.03.17

AIが広げた世界の法律はどこへいく?

2023.03.16

外国のある裁判で深まった、税や制度への探究心

人気記事ランキング

1

2023.03.22

AIを使えばだれでも名画を生み出せる?

2

2019.07.17

フランス人はなぜデモを続けるのか

3

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

4

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

5

2023.03.17

AIが広げた世界の法律はどこへいく?

連載記事