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理解度を高めるのは、説明を聞くよりも、説明をすること

伊藤 貴昭 伊藤 貴昭 明治大学 文学部 准教授

教育以外にも応用できる説明行動

 いま、コロナ禍によって、多くの学校がオンライン授業を余儀なくされています。すると、オンライン授業は学習効果が低いとか、対面授業に早く戻したいという声を多く聞きます。

 しかし、授業形態に関わらず、どうすることが学習効果を上げることに繋がるかを考えることの方が重要です。

 例えば、説明行動の点ではオンデマンド型よりライブ型の方が有効と述べましたが、オンデマンド型にはライブ型や対面授業にはない特徴があります。好きな時間に視聴できることや、繰り返し視聴できること、そして、倍速再生が可能なことです。

 まだ、研究の途中ですが、倍速で視聴した学生と、普通の速度で視聴した学生で、学習効果にそれほど差が出ないのではないかと思われます。

 むしろ、倍速にすれば、同じ時間で、同じ講義を2回視聴することができます。その方が意味があるのではないかと感じています。

 さらに、今後、対面授業が復活しても、オンデマンド型を併用することで学習効果を上げられるかもしれません。

 例えば、ハイブリット型授業というと、対面授業を同時配信して、教室外でも受講できるスタイルとして捉えられていますが、オンデマンド型を活用したハイブリットとして、効果的な反転授業を行えるのではないかと考えられます。

 つまり、授業内容をあらかじめアップロードしておけば、学生は都合の良い時間に、倍速再生で短時間に内容を確認できます。すると、実際の授業では、質疑応答などに時間をかけることができるようになります。

 とはいえ、倍速で視聴することは集中力が必要で疲れますし、こうしたハイブリット型授業によってどれだけ学習効果が上がるのかは、これから、さらに検証していかなくてはなりません。

 しかし、このコロナ禍でオンライン授業が普及したことを、従来の対面授業と単純に比較するのではなく、それぞれの授業形態の良い面を、学習効果を上げるという観点から活用していくことを考える良いきっかけにするべきだと思っています。

 新学習指導要領で示されているのは、「主体的、対話的で深い学び」です。

 もちろん、前提となる知識量は必要です。100の知識を覚える必要があるのであれば、まず、それを覚えることが大事です。

 そして、それを自由に使える知識にしていくためには、それを使う機会を与えること。つまり、その知識を使った説明や、その知識自体を説明する経験をもつことが有効だと考えます。

 その意味で、説明行動は「主体的、対話的で深い学び」に繋がっていくものですし、それは、どのような授業形態においても取り入れることが可能であり、ハイブリットによってさらに効果的にすることもできると考えています。

 説明行動によって理解度が促進することを知っておくことは、一般の社会生活においても有効だと思います。

 例えば、企業の中のコミュニケーションにおいても、言う側は、言えばすべてが伝わっていると思いがちです。聞いた側も、聞けばわかったつもりになりがちです。でも、それは思い違いかもしれないのです。

 そのことを理解していれば、もっと、ていねいな擦り合わせやコミュニケーションがとれるようになると思います。

 また、例えば、課長が係長に説明したことを、係長から課内のスタッフに説明させると、その係長自身の理解度も高まり、効果的です。

 他者に説明することによって自らの理解を深めていく、という説明行動の仕組みを理解しておくことは、組織の運営においても非常に有効に活用できると思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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