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2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

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人道的ではないゲーミフィケーション

 最近、ゲーミフィケーションという言葉が流行っていると思います。それは、ゲームを有効に使ったビジネスや学習のことと思われていますが、実は、大きな勘違いです。

 ゲーミフィケーションとは、もともと、マーケティング戦略から出たもので、ゲームの要素を応用して、消費者を取り込んだり、コントロールするという発想です。

 例えば、乗った距離に応じてマイレージポイントがつく航空会社のプロモーションなどは典型です。5皿食べるごとにガチャゲームができる回転寿司店などもあります。

 つまり、購入するというクエスト(課題)をクリアすると、なにかしらの報酬が得られる、という仕掛けです。

 この効果を学校で利用しようと、「今日のクエストは問題集を3ページやること。できた子には10XPをあげます」などという言い方をする先生もいます。でも、これは、宿題をクエスト、達成度を表す点をXPに言い換えているだけです。

 あるいは、授業を一週間頑張った子は金曜日の最後の授業でゲームをさせてあげる、というやり方もあります。しかし、これは、ゲームをするということを単にご褒美にしているだけです。

 生徒をこのようにコントロールすることが、本当に有効な教育と言えるでしょうか。

 では、ゲームを有効に使った教育とはどういうものでしょうか。

 まず、着目するべき点は、冒頭に述べたように、いまは、ゲームに関心、興味が高い生徒が多いということです。彼らは親や先生に強制されたわけではなく、自らゲームに集中し、スキルや知識を高めています。

 こうしたスキルや知識を「ゲーミング・キャピタル」と捉える考え方があります。すなわち、ゲームによって蓄えたスキルや知識は、その子の資本になるということです。

 例えば、ピアノのスキルがある人は、それを元手にピアノ講師となり、授業料を稼ぐことができます。ゲームのスキルも、それと同じような資本なのです。

 例えば、人気のゲームのスキルや知識が高ければ、それだけで、友だちの間で一目置かれたり、尊敬を得ることもできます。また、まだスキルが低い子に教えるという立場になると、自信や自己肯定感に繋がるでしょう。

 さらに、同じゲームを世界中で楽しむ今日では、そのゲームのコミュニティが世界規模で存在するのです。そのゲームが得意な子は、日常の友だちや学校のクラスメイトを越えて、世界中のゲーマーと交流することも可能になります。

 こうしたことを可能にする「ゲーミング・キャピタル」を活かした教育を、考えるべきだと思います。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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