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コロナ禍の人口移動で、都市のバーチャル化が進む?

川口 太郎 川口 太郎 明治大学 文学部 教授

都市の存在意義は失われない

 あらためて、都市とはなにかを考えてみましょう。人類の歴史を振り返れば、都市とは、多様な人々が集まり、そこで様々な情報や知識が交換され、その中から新しい発展が生まれ、それが人々に還元されていく場であったわけです。

 つまり、多様な人々が高密度に接触する場として都市があり、それが都市自体の活力でもあったわけです。

 情報化社会の進展は、そうした都市のバーチャル化が可能と思わせ、コロナによるパンデミックがそれを後押ししました。

 しかし、その中で、創造性にとってはリアルなコミュニケーションが重要であることが再認識されたのです。それは、クリエイティブな人たちやエリートばかりではありません。

 例えば、東京の下町と言われる地域で、空き家になった住居や商店を拠点にして、多様な人たちが集まり、ネットワークが生まれ始めています。そのネットワークは、自分らしさや、やりがい、生きがい、貢献を見つけようとする人たちが、自分たちの居場所を築く動きにもなっています。

 創造やイノベーションというと、社会をひっくり返すような大事業と思われがちですが、もっと身近なことから、私たちの生活を豊かにするものに繋がっていくこともあります。

 その意味では、進む情報化社会の中で、対面のネットワークが果たす役割に注目したいと思っています。

 そして、そうしたネットワークは、人が自分の居場所を見つけるきっかけにもなっていくのではないかと思っています。

 その意味では、都市は形が変わっても、その存在意義は変わらないのではないかと思うのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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