
2023.02.03
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
教職調整額の見直しや、制度そのものの改革は何度も議論されてきましたが、いまだに結論が出ない理由のひとつは、教育関係の予算が減らされていることです。例えば、教職調整額を廃止して、時間外勤務手当を支給しようと主張しても、本当に支払えるだけの財源の保障がないのです。2004年に国立大学が法人化されましたが、それによって“公立学校の教員給与は国立学校に準拠する”という制度が廃止されました。どこの県で先生になっても給料は同じ、というのではなくなったのです。また、教員の人件費の1/2は国が都道府県に補助していて、それまではその使い方について国レベルで定めが設けられていましたが、2004年からは、国から渡される総額の範囲内でなら都道府県が使い道を決められるようになりました。一人あたりの給与を引き下げてその分で数を増やすということも可能になったのです。そして2006年には、国の負担割合が1/2から1/3に減らされます。教育現場の実情からは、教員の数を増やすことが必要なのに、自治体は悲鳴を上げました。すでに2001年に、いわゆる「定数くずし」(正規教員ひとり週40時間の勤務時間を例えば10時間ずつ4人の非正規教員でおきかえる)が可能になっていたので、結果として、一人あたりの給与額は抑えられ、非正規教員を増やすという対応が出てきたのです。教員の待遇改善どころではありません。とくに非正規教員の生活は過酷で、教員をめざす学生にとってはショックを受けることのひとつです。そして、このことは教員の待遇の問題以上に、日本の教育の質、子どもにとっての教育の質という点で、大きな問題となっています。