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「専門家」の話を鵜呑みにするのは危険

租税回避問題は、企業の法人税だけの問題ではありません。個人富裕層の所得税や相続税などでも大きな問題となっています。先に述べた「武富士事件」などは、その象徴的な事件です。

法務や税務の専門家がついて、洗練された形式の租税回避スキームを練っているような企業や富裕層も増えているようなのです。

そうした専門家の中には、「節税」商品を売り歩いている人たちもいます。しかし、租税回避行為は、合法スレスレのところを狙って納税額の軽減を図ろうとする行為であるため、「租税回避」が課税の対象になるかどうかの境界は、一般にかなり微妙です。

ともすると、申告漏れなどと指摘されて追徴課税を受け、加算税や延滞税が課されて、本来の課税額よりも多くの納税をしなければいけなくなる場合もあります。そうしたリスクがあることに、よく注意をしていただきたいと思います。

合法的な節税、税減らしだと思って専門家を信用したら、脱税として摘発されてしまったという極端な事例も生じているようです。少し前にもそのようなケースが報道されていました。

税務に詳しくない方にとって、どこからが不当な租税回避として追徴課税の対象となるのか、どこからが脱税として犯罪になってしまうのかは、分かりにくいところもあると思います。

仕事でこれまでに、様々な経営者の方々にお会いしましたが、税金は少し無理をしてでも額が減るようにしようという姿勢の方よりも、税金はきちんと正当な額を払おうという姿勢の方の方が、ビジネスが上手くいっているような印象を受けました。

租税回避はどこからが追徴課税の対象となるか、その分かれ目が微妙で、一般の方にはなかなか見分けがつかないと思います。追徴課税を受けたり、場合によっては脱税で摘発されたりするリスクがあるものだという点に、是非気をつけていただきたいと思います。

租税回避事件などの報道があったとき、みなさんも納税者としての視点から、この問題を考えてみてほしいと思います。


#1 租税回避行為って?
#2 日本でも租税回避行為が増えている?
#3 租税回避行為を取り締まることはできるの?
#4 租税回避は安全な行為か?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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