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2020.09.29

#3 主体的なキャリア形成のためにはなにをすれば良いの?

#3 主体的なキャリア形成のためにはなにをすれば良いの?
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興味関心の合う人たちと出会い、話すこともきっかけとなる

主体的なキャリア形成と言うと、みなさんはどのような活動をイメージするでしょうか。

たとえば、最近では、学生の頃から起業している人もいます。あるいは、就職後も社会人大学院に通って学位を取得したり、大学が開催するシンポジウムやセミナーに参加したりして知識やスキルを高め、よりレベルの高い仕事を目指す人もいます。

一方で、キャリア形成において社員の主体性を重視すると言われても、何をすればよいのか戸惑い不安になっている人もいるのではないでしょうか。

たとえば、働き方改革で長時間労働が是正され、早い時間に帰れるようになったものの、時間を持て余し、ただフラフラと飲食店などに寄り道するだけの会社員を指して、「フラリーマン」と呼ぶことがあります。

実は主体的なキャリア形成といっても、そもそも自分の軸となる強みや専門性は何であるかといった、自己への気づきが明確でなければ、どこに向かって努力すればよいのかもわかりません。

強みや専門性といっても、必ずしも資格や学問領域などを指すわけではなく、たとえば普段の仕事において自分が得意なことや、自分なりに力をいれていきたいテーマや領域といったものも、その人の強みや専門性といえます。それらは、環境の変化やキャリアを積む中で、常に変わっていくものでもあります。

しかしプロティアン・キャリアを提唱したダグラス・ホールは、自己への気づきがないまま、環境変化に反応するだけでは、それはカメレオンのような行動にすぎないと言います。つまり、主体的なキャリア形成にとってはまず、自分の強みや専門性は何であるのかといった自己への気づきを明確にすることが必要なのです。

では、自己への気づきはどのようにして生まれるのでしょうか。私たちは何から始めればよいのでしょうか。まずは、普段あまり仕事で関わらないような多様な人たちと、気軽に話をすることから始めれば良い、と考えてみてください。

たとえば社内の勉強会や社外の研究会、趣味のサークルなど、興味のあるものに参加してみましょう。そこでは、違う部署の人の話が聞けたり、自分とは全く違う業種や職種の人たちと趣味の話で盛り上がったりするかもしれません。

このように多様な人たちとゆるやかな活動を行う中では、普段自分が考えてもいなかったようなアイディアや、自分の仕事を見直し、新たな工夫を考えるきっかけとなるような気づきが得られるかもしれません。それも、主体的なキャリアを形成していく一歩になるのです。

実際に、私が研究調査していたときに出会ったある女性技術者は、カスタマー担当の自分の仕事はあまり価値がないと思い、自信をもてませんでした。

でも、他のエンジニアや他部署の人と話す機会をもち、カスタマーの声は貴重な情報で、それが製品開発にも繋がると聞き、自分の仕事に自信をもてるようになり、貴重な情報を得るという視点から、仕事の取り組み方も変わっていきました。

また、カフェ巡りが趣味という人が、カフェ好きが集まるコミュニティを見つけて参加したところ、メンバーは多様な職業や企業の人たちでした。そのため、カフェという共通の趣味をきっかけとして様々な業界や仕事のことを知り、自分の仕事についての考えを深められたといいます。

このように多様な人との活動では、普段自分が考えなかったような新たな視点や情報に触れることができます。またそうした場では、普段の職場では説明がいらないようなことも、改めて自分の言葉で相手に伝わるように説明しなくてはなりません。そうした対話の中で、自分の仕事の意義や専門性について内省し、新しい視点から仕事をとらえ直したり考えを深めたりすることができるのです。

このように、主体的なキャリア形成とは、必ずしも転職行動だけを意味するものではありませんし、社会人大学院に通ったり資格を取ったりといった積極的な能力開発だけを指すものではありません。

自分の仕事における強みや専門性を認識していくこと、自分の職業的自己概念を明確にしていくことから、主体的なキャリア形成への第一歩は始まります。

そのためには、時には思い切って社外の集まりに参加するなど、興味関心を共有する多様な人たちと交流してみることも大切です。興味関心といっても、必ずしも仕事に関わる内容だけでなく、趣味などでも良いと思います。

次回は、主体的なキャリア形成のための環境づくりについて解説します。


#1 主体的なキャリア形成とは?
#2 主体的なキャリア形成は企業にとって有効?
#3 主体的なキャリア形成のためにはなにをすれば良いの?
#4 主体的キャリア形成で幸せになれるの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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