明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

過去を検討し直し、いまを相対化する視点を持とう

明治大学 政治経済学部 専任講師 兼子 歩

ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。

教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【14】

ジョーン・W・スコット『ジェンダーと歴史学』(荻野美穂訳・平凡社・1992年)

本書はジェンダーという概念を歴史学の方法として導入する上で最も重要な役割を果たした名著であり、世界中の歴史学者のみならず多くの人々に読まれ、センセーションを巻き起こしました。性差は歴史の中で語られることを通じて「つくられる」ということを指摘し、その「つくられ方」を明らかにするのがジェンダーの歴史学だと提起しています。

難解な本なので学部生時代に読んだときは理解できない部分も少なからずあったのですが、一般の性差に関する常識を覆すような考察に感動しました。

社会の中で我々が「男はこう、女はこう」と当たり前に考えているような特定の性差のあり方(ジェンダー)が、歴史のどの局面でそのように認識されるようになってしまったのか、さらに言えば歴史家たちも過去を描く上でどのようにそうした特定の性差についての認識を再生産してしまったのか、読み解いていく内容になっています。

歴史学は過去のことを研究するため、色々な意味ですぐに利益を生んだり、社会を良い方向に改善するための方法をパッと出せるものではありません。しかし、大きな意味で、人間の幸福や正義をなし得る上で役に立つ学問なのだと感じさせてくれる本です。過去を批判的に検討し直し、いまを相対化するまなざしを持たなければ、つくられる未来は限られたものになってしまうことを示唆してくれます。

学術的に高度で難解な本ではありますが、中には熱いメッセージが込められていて、人生経験を積まれてきた方ならば、本書のどこかしらに興味をひかれる、ハッとする部分がでてくるのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Facebook
  • Twitter
  • Hatena

連載コラムの関連記事

#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?

2020.12.1

#1 免疫力を上げればウイルスに負けない?

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 鈴井 正敏
頭を一度クリアにし、アイデアの創出を促そう

2020.11.26

頭を一度クリアにし、アイデアの創出を促そう

  • 明治大学 理工学部 教授
  • 小野 弓絵
#5 日本の企業は時代遅れになる?

2020.11.24

#5 日本の企業は時代遅れになる?

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 長野 史麻
#4 サステナビリティ経営は政治に左右される?

2020.11.20

#4 サステナビリティ経営は政治に左右される?

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 長野 史麻
国内外の新聞や雑誌の見出しを読んで世界を知ろう

2020.11.19

国内外の新聞や雑誌の見出しを読んで世界を知ろう

  • 明治大学 商学部 教授
  • 小林 尚朗

Meiji.netとは

Meiji.net英語版

特別授業

新着記事

2020.11.25

エビデンスに基づく取り組みは、自然相手の農業にも重要

2020.11.18

脳の活動を可視化することで、人は新たな自分に変われる

2020.11.11

アメリカ・ファーストでは、国際経済の新たな秩序づくりはできない

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

2020.10.28

アフリカ独特のユルさが、アフリカらしい発展の鍵となる

人気記事ランキング

1

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

4

2020.11.25

エビデンスに基づく取り組みは、自然相手の農業にも重要

5

2020.03.18

幻想的に光る「夜光雲」が地球温暖化のメカニズムを解く

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム