明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

多角的な視点を養い、自らの知識を広げていこう

明治大学 政治経済学部 准教授 木寺 元

ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。

教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【9】

宮本輝『青が散る』(文藝春秋・1982年)
藤目ゆき『性の歴史学―公娼制度・堕胎罪体制から売春防止法・優生保護法体制へ―』(不二出版・1997年)

『青が散る』は、大阪郊外に新説された大学のテニス部を舞台に、若者たちの4年間を描いた宮本輝の自伝的小説です。青春時代に直面する悩みなどがリアルに描写され、若いときに大変感銘を受けました。彼の作品では『泥の河』をはじめとする“川三部作”も好んで読みましたが、在日コリアンたちの暮らしぶりや戦争ですべてを失ってしまった父親の姿など、戦後の混沌とした状況が書かれており、当時の社会状況を知る上で興味深いものがあります。

マイノリティの話にも関心があり、いま読んでいるのは、戦時中の女性運動がどのように行われていたのかなど、日本近現代史を性と生殖の視点から研究した『性の歴史学』という本です。女性運動の中にも格差があり、富裕層の女性たちが主張していたことは必ずしも当時本当に困窮していた女性たちを救えていなかったのではないかなど、幅広い視点に気づかせてくれます。

自分の興味があることについて書かれた研究書を読むのは知識を広げるひとつの方法です。社会人の方も、ビジネスの分野だけでなく、自分の生い立ちや生活環境の中で気になっていることが研究された本に目を向けてみてはいかがでしょうか。一般にステレオタイプで物事を考えがちですが、研究者が歴史を掘る、社会を掘るというと、いままでとはまったく違う視点を出してきてくれるので面白いです。また、小説も自分が経験してこなかった人生を見せてくれます。読書を多面的に捉えることで、視野や知識の広がりに繋がると思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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