
センサー情報を基に提供される様々なサービスや機能
センサーは、私たちの生活の至る所で使われています。廊下やトイレに、人を感知する赤外線センサーを搭載したライトや暖房機を設置している人も多いのではないでしょうか。昔からある体温計も体温を測定するセンサー、体重計は体重を測定するセンサーを使った装置です。これらは、私たちがイメージしやすいセンサーです。
もっと身近なセンサーがあります。それはスマートフォンです。例えば、スマホのアプリに歩数計の機能を持つものがあります。スマホに搭載された加速度センサーで歩行パターンを測定することで実現しています。指紋や顔画像でロックすることができるのも、センサーの機能です。また、GPSを使って地図上で位置を知ることもできます(GPSは正しくはセンサーではないですが、位置測定できるセンサーとして考えることにします)。
既に私たちの周囲に溢れているセンサーですが、それがネットワークにつながることで、測定したデータはより価値あるものになります。例えば、体温や体重のデータを自動的にスマホのアプリやクラウドに蓄積し、その経過や変化をコンピュータが分析することで、体調管理についての細かいアドバイスを発信できるようなシステムが既に存在しています。スマホの位置情報を使った、紛失物を探したり、子どもやお年寄りがいる場所を知ることができたりするサービスもあります。
これらは、感じる部分だけでなく、センサーがつながるネットワークの先には考える部分が必ずあります。考えた結果を使って何らかの動作が実現されれば、それはもはやロボットです。まさに、センサー+ネットワークが、システムのロボット化の入口になるのです。
さて、このような私たちの身近にあるセンサーだけでなく、ロボット的なシステムの研究開発の先端では、より高度なセンサーシステムも使われています。
移動ロボットや自動運転車にほぼ必ず搭載されるLiDARというシステムは、簡単に言えば、レーザーを照射して、物体に反射して返ってくる時間から、物体の形状を緻密に測定できます。これで街全体を測定すると、精密な3Dマップが作れます。
何メートルも誤差が出る現在のスマホのGPSではなく、電子基準点の情報を使ってリアルタイムで位置の補正をするRTKというシステムや、日本が打ち上げた衛星測位システム「みちびき」を利用したシステムなどにより、数センチの精度で位置を取得することもできます。うまく使えば、地図上の位置だけでなく、特定の誰かがどこでどんな動きをし、どこに顔を向けているのか、ということまで把握できるでしょう。
こうしたセンサーシステムは、以前はかなり高価なものでしたが、近年は導入しやすくなっています。導入しやすくなり使用者が増えれば、それらを活用する新しいアイデアも生まれやすくなります。それは、より安価に小型化し、広く普及していくことにもつながります。将来は、このような高度なセンサーシステムも、スマホに搭載されるセンサーのように、私たちが当たり前に使うものになるかもしれません。
次回は、センサーデータを使って学習するAIについて解説します。
#1 最新ロボットは人型じゃない?
#2 私たちの身近に広がるセンサー
#3 センサーデータを使ってロボットを賢く!
#4 ロボットは個人の情報を収集している?
#5 センサーデータって誰のもの?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。