明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

#4 地方は都市より住みにくいでしょう?

奥山 雅之 奥山 雅之 明治大学 政治経済学部 教授

都市より子育てがしやすい町もある

北海道の帯広市の北に上士幌町という町があります。この地域は酪農が盛んで、産業は存在し、職はあるのですが、やはり過疎化と財政難が悩みでした。若者の多くが住みやすい帯広市などに出て行ってしまうのです。

そこで、取り組んだのが「ふるさと納税」の活用です。まず、「ふるさと納税」の仕組みにいち早く取り組み、寄付額でトップクラスの自治体になりました。

しかし、上士幌町の取り組みの要点はその先にあります。町では、集まった寄付を「子育て少子化対策夢基金」として基金化し、その使途を明確化し、子育て世代への支援に重点化しました。

具体的には、認定こども園の完全無償化や賃貸住宅の整備促進などがあります。子育て世代の収入減少を実質的に補填することで、移住者の、年収の減少と子育ての不安を解消することを目指したわけです。

その結果、上士幌町の人口は社会増を達成しました。「ふるさと納税」を財源とした若い世代向けの移住・定住策が成果を上げたのです。

実は、「住みたい町」というのは、地域の創生、活性化にあたってとても重要なポイントです。

北アメリカ西海岸に位置するオレゴン州のポートランドは一地方都市ですが、長年、市開発局(PDC)が都市再生が必要な荒廃した地域を中心に、戦略的なインフラ整備から企業誘致を行い、官民一体となった町づくりを進めてきました。

その結果、今日では、アメリカで最も住みたい町といわれ、その人口は約60万人で、北米西海岸都市の中では3番目に多いのです。町の課題を明確にし、そこを重点的に支援する取り組みは、上士幌町にも共通しています。

「ふるさと納税」のような臨時的な財源が確保されると、多くの自治体では「議会筋」も含めて財政支出拡大要望が強まり、財政規律は緩みがちになります。

しかし、上士幌町は、大切な財源の使途を町の最も重要な課題解決に特化し、選択と集中を行うことに、地域の意見をまとめました。これが成功のポイントなのです。

この「まとまり」が上手くいかず、様々な意見が対立するばかりの地域では、活性化も発展も望めません。こういう状況になると、首長のリーダーシップがとても重要になります。

どうしても調整が上手くいかない場合は、しがらみのない「よそ者」の視点を入れることもひとつの方法になります。実際、首長や自治体の職員を、他地域から誘ったり、公募する事例もあります。

次回は、都市生活者と地方の新たな関係づくりについて解説します。

#1 都市生活者に地方創生は関係あるの?
#2 なぜ、世界では「シリコンバレーモデル」が成功しているの?
#3 地方は、よそ者に排他的なんでしょう?
#4 地方は都市より住みにくいでしょう?
#5 地方創生は都市生活者に何をもたらしてくれる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

リレーコラムの関連記事

時には立ち止まり、待つことをもっと意識しよう

2022.9.22

時には立ち止まり、待つことをもっと意識しよう

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 吉松 梓
人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう

2022.9.15

人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 本所 靖博
失敗を恐れない、チャレンジ精神を養おう

2022.9.8

失敗を恐れない、チャレンジ精神を養おう

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 佐々木 羊介
語彙力を鍛え、言葉の優れた使い手になろう

2022.9.1

語彙力を鍛え、言葉の優れた使い手になろう

  • 明治大学 文学部 教授
  • 矢内 賢二
理解し合い、世代の壁を越えていこう

2022.8.25

理解し合い、世代の壁を越えていこう

  • 明治大学 政治経済学部 准教授
  • 原 ひろみ

新着記事

2022.09.22

時には立ち止まり、待つことをもっと意識しよう

2022.09.21

すべての子どもに、たくさんのキャンプを体験してほしい

2022.09.15

人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう

2022.09.14

現代の社会的課題を解決する糸口は、中庸の欲張り!?

2022.09.08

失敗を恐れない、チャレンジ精神を養おう

人気記事ランキング

1

2022.09.21

すべての子どもに、たくさんのキャンプを体験してほしい

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

4

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

5

2018.11.06

#2 日本政府の借金はなぜこんなに膨らんだの?

連載記事