
2019.02.13
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
若者が起こすイノベーションは、地方、地域の活性化の大きな要因のひとつです。そのモデルケースのひとつが「シリコンバレーモデル」です。
アメリカの大都市であるサンフランシスコの南部に位置するシリコンバレーは、半導体メーカーの集積地として知られ、アップルやインテル、グーグル、フェイスブックなど、日本でもよく知られるIT企業の一大拠点になっています。
ここには、アメリカ国内からだけでなく、インドや中国、シンガポールなどからも若者が集まります。彼らはここでITを勉強するのではなく、起業に成功するノウハウを学び、そのための人脈づくりを目指します。その人脈は、同じように起業を目指す若者であったり、大手のIT企業であったり、ベンチャーキャピタルであったりします。
ここでつくられた人脈は、彼らが自分の国に戻って起業するためのエコシステム(「生態系」)のベースになります。
要は、シリコンバレーに集まる若者たちは、リスクをとってイノベーションを起こす意欲が最初からあり、それを積極的に支援する環境がシリコンバレーにはあり、若者たちはそれを利用するために集まるということです。その結果、「シリコンバレーモデル」という理想的な頭脳環流・頭脳循環が起きるのです。
ところが、シリコンバレーに行って成功する日本の若者はほとんどいないのです。それは、リスクをとってイノベーションを起こすという文化が日本には希薄なためかもしれません。
世界の優秀な若者も、起業に成功するのは1/10程度といいます。しかし、彼らは一度や二度の失敗では挫折しません。成功の確率が1/10ということは、10回トライすれば最後には成功する、と彼らは捉えます。それを寛容する環境が社会にもあるのです。
しかし、日本では一度の失敗が致命傷になります。もともと、廃業率が低いが、開業率も低いのが日本社会の特徴なのです。
このことは国内でも同じです。地方出身の若者が東京の大学に進学し、そこで様々な知識を身につけたり人脈をつくっても、そのまま東京で就職するため、出身地に頭脳環流するケースは非常に少ないのが現状です。彼ら自身にイノベーションを起こして出身地を活性化するという意欲が希薄なのかもしれません。
しかし、地域にそれを支援する環境がなく、若者が活躍できないことも大きな要因なのではないかと思います。全国各地の首長さんは、若者を受け入れる環境をどのようにつくっていくかを検討することが必要かもしれません。
次回は、地域活性化に成功した事例について解説します。
#1 都市生活者に地方創生は関係あるの?
#2 なぜ、世界では「シリコンバレーモデル」が成功しているの?
#3 地方は、よそ者に排他的なんでしょう?
#4 地方は都市より住みにくいでしょう?
#5 地方創生は都市生活者に何をもたらしてくれる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。