
2019.12.04
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
私たちには身体に害となる異物が体内に入ったとき、それを排除する免疫機能があり、腸管はその担い手として重要な働きをしています。腸管には、体内の免疫細胞の60〜70%が集結し腸管免疫系を構成しています。腸の表面は柔毛細胞で覆われていて、ところどころに関所として働くパイエル板やリンパ節によって、体外から入ってきた異物のかけらを取り込みます。すると、免疫細胞がそれは身体にとって有益なものか有害なものかチェックし、食品は異物ですが受け入れますし、病原体と認識すれば、その情報は白血球細胞やNK細胞に伝えられ、病原菌は排除されます。さらに、この情報は免疫細胞が血流に乗ることで、全身に伝えられます。なぜ乳酸菌を摂取するとインフルエンザやアレルギーの予防につながるかというと、直接または他の腸内細菌との間接的な関わりを通して免疫系に刺激を与えることにより、全身の免疫機能が上がるためと考えられています。
ここで大事なのは、この腸管の免疫系は様々な異物を学習し、年中刺激を与えられることによって機能が成長することです。刺激が少なく学習が少ないと、例えば、取り込んだ異物に対する認識応答を誤り、アレルギーのように免疫機能を暴走させるような事態を引き起こします。その意味で、腸管に届く生きた乳酸菌や死んだ菌体の破片が、良い刺激となって免疫系を活性化させるのに非常に役立つと考えられます。
次回は、ヨーグルトを摂るときの注意点について解説します。
#1 乳酸菌は伝統的な発酵食品の「影の主役」
#2 乳酸菌を使うと美味しくなるのは、なぜ?
#3 牛乳はどうやってヨーグルトになるの?
#4 胃酸でも死なないピロリ菌を乳酸菌が殺す?
#5 乳酸菌は人の免疫力を高める?
#6 ヨーグルトは薬になる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。