2024.03.21
- 2018年10月9日
- リレーコラム
#6 ヨーグルトは薬になる?
佐々木 泰子 明治大学 農学部 教授(2022年3月退任)ヨーグルトは美味しく食べ続けることが大事
ヨーグルトは美容や便秘、また花粉症やアトピー、がんや高血圧などの予防にも繋がるといわれますが、それは、この連載で解説してきたように、乳酸菌が作る乳酸が直接腸管や他の腸内細菌に作用して便通を良くしたり、乳酸菌の代謝物であるペプチドが高血圧を改善したり、乳酸菌自体が腸管免疫系に刺激を与え、それが全身の免疫機能の向上に繋がると考えられます。そして原料となる牛乳は、現代においても日本人に不足しているカルシウムを吸収しやすい形で多量に含み、さらにビタミンやタンパク質などが豊富に含まれる優良な食品です。すなわちヨーグルトの食品としての機能は、牛乳の栄養価と、乳酸菌の代謝物、そして乳酸菌体そのものの機能、という三者の総合効果といえます。しかし、人によって腸内環境は違います。そもそも、万人に効くプロバイオティクスというものはないかもしれません。ヨーグルトを食べて体調が良くなったら、それはラッキーだと思うくらいが良いと思います。また、薬のように飲んだらすぐに効くというものでもありません。ブルガリア地方の人たちがそうであるように、毎日食べ続けることが大事です。その意味では、美味しいことは重要でしょう。最近ではいろんなタイプのヨーグルトが売られています。自分の好みに合った味を見つけ、美味しく食べ続けることができれば、それが良いのではないかと思います。
最後に、ご自宅でヨーグルトを手作りされている方にアドバイスを。購入したヨーグルトや、スターターとして売られている乳酸菌を買ってきて、ご自宅で一回ヨーグルトを作るのは良いと思いますが、その菌を植え継ぐのはとても危険です。乳酸に殺菌作用があるといっても、私達の環境には様々な菌が生息しており、どんな雑菌が混ざるかわからないからです。ちなみに、ヨーグルトのメーカーは、必ず、厳密な無菌環境下で、雑菌が生えにくい43℃のような高温で迅速に乳酸発酵を行っています。家庭ではそれは難しいので、菌を植え継いで食べ続けるのは避けてください。
#1 乳酸菌は伝統的な発酵食品の「影の主役」
#2 乳酸菌を使うと美味しくなるのは、なぜ?
#3 牛乳はどうやってヨーグルトになるの?
#4 胃酸でも死なないピロリ菌を乳酸菌が殺す?
#5 乳酸菌は人の免疫力を高める?
#6 ヨーグルトは薬になる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。