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#1 乳酸菌は伝統的な発酵食品の「影の主役」

佐々木 泰子 佐々木 泰子 明治大学 農学部 教授(2022年3月退任)

乳酸菌は殆どといえるくらい多くの発酵食品に使われている

近年、美容や病気の予防にも効果があるといわれヨーグルトへの関心が高まっています。ヨーグルトは身近な食品ですが、「生きたままの乳酸菌を大量に食べる」という、とても特殊な食品でもあります。ヨーグルトと乳酸菌のことをより詳しく知ってもらえば、さらに納得してヨーグルトを味わえるようになるのではないでしょうか。

そもそもヨーグルトが身体に良いといわれるようになったのは、免疫の研究者でノーベル生理学・医学賞を受けたロシアのイリヤ・メチニコフが、20世紀初頭にブルガリアを旅したときに住民たちが長寿であることに気がつき、彼らがよく食べているヨーグルトに注目したことがきっかけです。ヨーグルトには、腸内フローラを改善することにより人に有益な効果をもたらす生きた微生物が含まれている、とメチニコフは考えました。それが乳酸菌で、今日ではプロバイオティクスという概念になっています。

ヨーグルトで有名になったため乳酸菌というと乳製品に使われる菌と思われがちですが、乳酸菌とは、養分として摂った糖の50%以上を乳酸として出す菌の総称です。その種類は多く、通常菌には属と種の学名が付いて分類されますが、乳酸菌は属だけで34種くらいあります。例えば、私たち日本人は古くから味噌や醤油などの発酵食品を作っていますが、そのほとんどに乳酸菌が使われています。逆に乳酸菌を使っていない発酵食品は、酢と納豆くらいで、お酢も福山酢(鹿児島の黒酢)などの壺酢では乳酸菌が働いています。日本酒も、山廃仕込みという古来からある醸造法では乳酸菌が働いています。さらに以前は使っていなかったビールに、最近乳酸菌を使ったものが出されるようになり、ちょっと酸味が効いた味になると流行しつつあるようです。意外なところでは、チョコレートも原料となるカカオの実を発酵させるのに乳酸菌が働いています。チョコレートも発酵食品だったのです。

なぜほとんどの発酵食品において乳酸菌が重要な働きをしているのか、それは乳酸菌の優れた特徴に理由があります。

次回は、乳酸菌の特徴について解説します。

#1 乳酸菌は伝統的な発酵食品の「影の主役」
#2 乳酸菌を使うと美味しくなるのは、なぜ?
#3 牛乳はどうやってヨーグルトになるの?
#4 胃酸でも死なないピロリ菌を乳酸菌が殺す?
#5 乳酸菌は人の免疫力を高める?
#6 ヨーグルトは薬になる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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