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#3 最良のストレス対処法は?

岡安 孝弘 岡安 孝弘 明治大学 文学部 教授

ひとつの対処方法にこだわらず、柔軟に様々な方法を組合わせることが重要。

人は、強いストレッサーにさらされると、ストレス反応をできるだけ低減するための認知的、行動的な対処方法をとろうとします。このストレス対処を「ストレスコーピング」と言います。例えば、問題に直面したとき、多くの人は、まず、問題解決に向けて積極的に取組もうとすると思います。一生懸命取組み、上手く解決できれば、それが一番良い方法です。しかし、問題がなかなか解決できないときには、別の対処方法を試みることが重要です。気分転換をしたり、休息をしたり、また、周囲の人に助けを求めたり、問題を避けて逃げることも対処方法のひとつです。逃げるというと、自分が弱く、直面する問題に負けたように思いがちですが、積極的な問題解決をやり続けても、それがなかなか解決しないような場合には,慢性的なストレス状態に置かれ、心身ともに疲弊してしまい、うつ病になってしまったり、最悪の場合、自殺に至ってしまうこともあります。時には,緊急避難的に問題から逃げることも必要なのです。責任感が強く、真面目でプライドが高い人ほど、周囲に助けを求めることもなく、自分だけで問題を抱え込んでしまい、ひたすら問題解決だけに突っ走って、重大なストレス反応を起こすことがあります。ストレスコーピングで重要なのは、何かひとつの対処方法にこだわるのではなく、柔軟に、いろいろな対処方法を組合わせることです。絶対的なひとつの対処方法などはありません。疲れたと思えば、気分転換や休息をしたり、周囲に助けを求めたり、一時的に逃げても構いません。やり方は人によりけりです。もちろん、休みっぱなし、逃げっぱなしでもダメです。いずれにしても、ひとつの対処方法に拘泥するのではなく、自分に合った自分なりのペースの、ストレスコーピングの組み合わせを身につけることが重要なのです。

次回は、自分にストレス反応が現れているのか知る方法について紹介します。

#1 そもそもストレスってどういうこと?
#2 ストレスを感じない考え方ってある?
#3 最良のストレス対処法は?
#4 自分にストレス症状があるのか気づくには?
#5 相談に行くと専門家は何をしてくれるの?
#6 最良のストレスマネジメント法は?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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