明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

現状を相対的に捉え、自分らしさを貫く勇気を持とう

明治大学 文学部 准教授 関根 宏朗

ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。

教授陣によるリレーコラム/40歳までに読んでおきたい本【7】

菅野仁『友だち幻想』(ちくまプリマー新書・2008年)
ジョージ・オーウェル『一九八四年(新訳版)』(高橋和久訳・早川書房・2009年)
ミシェル・フーコー『真理とディスクール:パレーシア講義』(中山元訳・筑摩書房・2002年)

今回、とりわけ若い方を対象に、現状を批判的に省みてそれぞれの「問い」を深化していただければとの思いを込めて以下の3冊を選ばせていただきました。

一冊目に挙げた『友だち幻想』は、たとえば教員は“友だちみんなと仲良くしよう”などと言うけれども実はそんなことは難しいのではないかと、ドライにこどもたちに突きつけるような本です。「○○ちゃん一緒だね」「その気持ちわかる」という同質性によって結びついている集団は、たとえ一見するところうまく成り立っているように見えても、しかし実は「ここが違う」「あそこがおかしい」といった異質性排除の論理と裏表の脆い結びつきでもありえます。そうではなくて、むしろ「違う」という個の異質性からスタートしたうえでの同質性の逆説的な踏み固めなど、他者は他者であるのだとどこまでも冷静に引き受ける姿勢が本書では強調されており、若い世代の方にもぜひ読んで欲しいと思いました。

ディストピア小説の古典『一九八四年』は、“ビッグ・ブラザー”率いる党機構により市民の挙動・言動の一切が監視されている超全体主義的近未来の恐怖を描いています。行動が縛られるにしたがって、いつしか思考すらも抑制される。これはどこか遠い国、空想の話ではなくて、このほかならない現代日本においてもまた我々自身が監視され、飼い慣らされているのではないか、あるいはもっと言えば「監視する側」として自分がそこに加担すらしてはいないか…と折にふれ立ち止まり、自らを反省的に捉えかえすための良質な手引きになりえると思います。

『真理とディスクール:パレーシア講義』は、20世紀後半に活躍したポスト構造主義者のミシェル・フーコーが行ったカリフォルニア大学ロサンゼルス校での連続講演の記録です。副題にある「パレーシア」とは耳慣れない言葉ですが、恐れずに真実を率直かつ真摯に打ちだす行為を意味する概念で、それは古代ギリシア・ローマの社会ではきわめて重要視されていた営為でもありました。本書でフーコーはこのパレーシアに光を当て、古代のさまざまなテキストを構造的に読み解いています。若い方には損得を考えず、勇気をもって、ときに自分自身をむき出しにするような経験も大切であるように思います。またそのうえで、異質な他者とともに、パレーシア同士の響き合いを触媒としてさらに自らを変容させうるかのような生産的なディスクール(対話)の体験を、ぜひ重ねて欲しいと考えています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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