2024.03.21
- 2017年8月18日
- リレーコラム
#1 「地方創生」って、都市には関係ないでしょう?
小田切 徳美 明治大学 農学部 教授都市生活者にとっても他人事ではない地方創生。
いま、日本の農山村は、3つの空洞化といわれる問題が深刻です。それは、人口の流出と高齢化による人の空洞化、耕作放棄や荒廃林地、また空き家が増加する土地の空洞化、そして、地域を支えていた集落の脆弱化による「むら」(コミュニティ)の空洞化です。こうした問題によって危機的状況にある農山村は、日本全国にたくさんあります。その主因である東京一極集中を是正し、地方の活力を上げようとする政策が「地方創生」です。そう聞くと、これは地方部や農山村を救う政策で、都市には関係ないように思えるでしょう。しかし、農山村で起きている問題は、今後は都市でも同じように起きると予想されています。例えば、人の空洞化は農山村では半世紀以上前から直面している問題ですが、いま、都市でも少子高齢化として現実に起こっています。また、都市の空き家も問題になり始めていますし、都市生活におけるコミュニティの脆弱化はすでに問題になっています。そう考えると、地方の問題は実は都市の問題でもあり、地方創生は、都市創生、広く見れば、日本創生のモデルになることがわかってきます。つまり、地方の再生とは都市生活者にとってもリアルな問題であり、他人事ではないのです。
では、地方を再生するために、どのような動きがあるのか。それを見る前に、今後、日本社会はどうあるべきかを考えてみましょう。そこには、大きくは2つの選択肢があります。ひとつは、都市国家です。代表的な例はシンガポールで、都市のみで作る社会です。日本でいえば、地方の中核都市ごとに人も生活機能も集中させ、農山村を切り捨てることになります。もうひとつが、都市と農山村の共生です。都市と農山村それぞれがもっている独自の文化や強みにより、互いを補っていく社会です。人々は両者を行き来することが想定されます。政策は、当然、目指す社会によって変わってきます。しかし、それとは別に、いま、私たちの周りから自発的に起きている様々な動きによって、おのずとその選択肢が見えてきているのです。そのひとつが、田園回帰の動きです。
次回は、成功する田園回帰について紹介します。
#1 「地方創生」って、都市には関係ないでしょう?
#2 田園回帰って、どうやったら上手くいく?
#3 地方の生活に関わってみたい!! でも、どうやって?
#4 地方での活動を成功させる方法は?
#5 都市か地方の二者択一じゃなくても良い?
#6 農学部が人気なのはなぜ?
#7 でも、地方は消滅するって本当?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。