明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

演劇的に生きよう ―SNSに閉じこもってしまうなんてもったいない―

井上 優 井上 優 明治大学 文学部 教授

人間とは多面的な生き物だとシェイクスピアは教えてくれる

 シェイクスピアの生誕は1564年であり、今年はちょうど生誕450年になります。400余年前に生まれたシェイクスピアが、現在もなお多くの人々に読まれ、上演されるのには多くの理由があります。
例えば、シェイクスピアの作品の魅力は、登場人物の多様さもさることながら、一人一人の登場人物が、作中、多様に変貌することにあります。人物たちは、常に変化していくのです。
例えば『ハムレット』の主人公は、復讐を目的に生きていますが、本心を隠してその機会を伺うために狂ったふりをします。しかし、そのうち、狂ったふりという演技が本心を覆い隠すようになり、自分でも本心と見せかけの境界が見えなくなってしまいます。これって、現代社会でも、よくある光景ではありませんか。私たちだって日常を演技で過ごしています。そのうち、本心を見失ってしまうってこと、よくありますよね。そういうリアルな人間が描けているのです。そのリアリティがシェイクスピアの人物たちの魅力なのです。
同時代に目を向けても、シェイクスピア以外の文学や演劇では、キャラクターの性格や内面は、ほとんど一貫して変わりません。しかし、シェイクスピアの描く人間は、現代人の我々同様に、いろいろな状況に喜び、悲しみ、怒り、苦悩し、変貌していきます。人間の多面性を立体的に描き、そうした人間たちが集って起こす悲喜劇をもありのままに描いたのがシェイクスピアだと言えるでしょう。
私たちは、今自分が考えていることや、他人に投げかけられた言葉が自分や他人の全てだとつい思い込みがちです。しかし、今の心理状況がいつまでも続くわけではないことや、今の心すらもさまざまな感情の合成であるということをシェイクスピアは教えてくれます。私たちは、シェイクスピアを通じて「人間を知る」ことができるのです。

社会・ライフの関連記事

原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

2022.5.18

原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

  • 明治大学 法学部 教授
  • 勝田 忠広
木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

2022.5.11

木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 連 勇太朗
サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

2022.4.22

サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 源 由理子
熊本県産アサリ、産地偽装問題の一番の被害者は熊本県!?

2022.3.23

熊本県産アサリ、産地偽装問題の一番の被害者は熊本県!?

  • 明治大学 名誉教授(元専門職大学院 法務研究科教授)
  • 高倉 成男
国が「してくれないこと」はあきらめるしかないのか?

2022.3.4

国が「してくれないこと」はあきらめるしかないのか?

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授
  • 清水 晶紀

新着記事

2022.07.06

補助金を巡る意識改革が必要

2022.07.04

スマート社会の実現を私たちも考えよう

2022.06.28

コミュニケーションを第一に、家族を大切にしよう

2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

2022.06.21

地道でも “源”から、理解するようにしよう

人気記事ランキング

1

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

4

2018.01.26

#3 日本国憲法は「押しつけられた憲法」か?

5

2022.02.10

西欧でも関心が高まる、私たちが知らなかったイスラム教の魅力

連載記事