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2014.11.01

演劇的に生きよう ―SNSに閉じこもってしまうなんてもったいない―

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人間とは多面的な生き物だとシェイクスピアは教えてくれる

 シェイクスピアの生誕は1564年であり、今年はちょうど生誕450年になります。400余年前に生まれたシェイクスピアが、現在もなお多くの人々に読まれ、上演されるのには多くの理由があります。
例えば、シェイクスピアの作品の魅力は、登場人物の多様さもさることながら、一人一人の登場人物が、作中、多様に変貌することにあります。人物たちは、常に変化していくのです。
例えば『ハムレット』の主人公は、復讐を目的に生きていますが、本心を隠してその機会を伺うために狂ったふりをします。しかし、そのうち、狂ったふりという演技が本心を覆い隠すようになり、自分でも本心と見せかけの境界が見えなくなってしまいます。これって、現代社会でも、よくある光景ではありませんか。私たちだって日常を演技で過ごしています。そのうち、本心を見失ってしまうってこと、よくありますよね。そういうリアルな人間が描けているのです。そのリアリティがシェイクスピアの人物たちの魅力なのです。
同時代に目を向けても、シェイクスピア以外の文学や演劇では、キャラクターの性格や内面は、ほとんど一貫して変わりません。しかし、シェイクスピアの描く人間は、現代人の我々同様に、いろいろな状況に喜び、悲しみ、怒り、苦悩し、変貌していきます。人間の多面性を立体的に描き、そうした人間たちが集って起こす悲喜劇をもありのままに描いたのがシェイクスピアだと言えるでしょう。
私たちは、今自分が考えていることや、他人に投げかけられた言葉が自分や他人の全てだとつい思い込みがちです。しかし、今の心理状況がいつまでも続くわけではないことや、今の心すらもさまざまな感情の合成であるということをシェイクスピアは教えてくれます。私たちは、シェイクスピアを通じて「人間を知る」ことができるのです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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