明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

戦争の記憶を未来に活かすために

山田 朗 山田 朗 明治大学 文学部 教授

被害の側面ばかりが語り継がれがちな戦争の記憶。加害の側面も含めた全体像に目を向けることで、はじめて戦争の記憶を現在に、そして未来に活かすことができます。そのためには、人の記憶だけでなく、地域の記憶を活用することが必要です。

日本人に抜け落ちている戦争の記憶の一面

山田 朗 毎年8月になると、戦争の記憶を呼び起こす人は多いでしょう。今年は戦後70年の節目の年でもあり、多くの人が様々な思いをもって振り返るのではないでしょうか。
 しかし日本で、戦争の記憶が正しく継承されてきたかといえば、否といわざるをえません。それは、今日では近隣諸国との歴史認識のギャップとなって、大きな問題となっています。なぜ、そうなったのか。その原因のひとつは、戦争体験者にとって被害を受けたことは語りやすいが、加害的側面は語りにくいからです。日本では、自分たちが空襲されたことや疎開したこと、原爆によって受けた惨状は、いまの若い世代の多くの人たちにもある程度は伝わっています。しかし、日本軍が近隣諸国でどんな行為を行っていたのかはほとんど語られず、その記憶は継承されていません。ところが、日本人が空襲を受けた記憶を継承しているように、近隣諸国の人たちは日本軍から受けた被害の記憶を継承し続けています。私たち日本人にとって、70年前の戦争の被害だけでなく、日本軍が犯した加害的側面にも目を向けることは重要です。それは、近隣諸国との戦争記憶のギャップを埋め、国同士の新たな関係を構築していく土台となるとともに、戦争の異常さと愚かさを後世に伝える土台ともなるからです。
 しかし、体験者ほど語りにくい加害の記憶を、現代の私たちはどうやって引き継いでいけばよいのでしょうか。

社会・ライフの関連記事

原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

2022.5.18

原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

  • 明治大学 法学部 教授
  • 勝田 忠広
木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

2022.5.11

木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 連 勇太朗
サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

2022.4.22

サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 源 由理子
熊本県産アサリ、産地偽装問題の一番の被害者は熊本県!?

2022.3.23

熊本県産アサリ、産地偽装問題の一番の被害者は熊本県!?

  • 明治大学 名誉教授(元専門職大学院 法務研究科教授)
  • 高倉 成男
国が「してくれないこと」はあきらめるしかないのか?

2022.3.4

国が「してくれないこと」はあきらめるしかないのか?

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授
  • 清水 晶紀

新着記事

2022.06.28

コミュニケーションを第一に、家族を大切にしよう

2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

2022.06.21

地道でも “源”から、理解するようにしよう

2022.06.17

アインシュタインはいかにしてアインシュタインになったのか

2022.06.16

知の探索と深化の“両利き”で強みをさらに磨こう

人気記事ランキング

1

2020.11.04

私たちの身近にある熱エネルギーには多様な可能性がある

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2022.06.22

ゲームのスキルは、その子の「資本」になる

4

2021.12.15

使い捨て文化にはない豊かさがある、日本の漆器の文化

5

2022.02.10

西欧でも関心が高まる、私たちが知らなかったイスラム教の魅力

連載記事