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リフォームの障害となる建物の排水

 ところが、近年、この排水システムが問題になるケースが生じています。

 現代は、人生100年時代といわれます。すると、ライフステージも大きく変化するので、それに応じて暮らし方も変化し、住居をリフォームすることも必要ですが、集合住宅で水まわりをリフォームする際に、排水システムが課題となることが多いのです。

 古いマンションなどでは、構造躯体となるコンクリートスラブ(スラブ)の上に床材を直接敷く直床(じかゆか)工法が多く、水まわり部分は配管を設置するために1段あげて設置していました。古いマンションの水まわりがバリアフリーでなく、段差があるのはそのためです。

 一方、近年のマンションの床は、スラブの上に束(つか)を立て、フローリングなどの仕上げ床が構成する二重床工法が一般的であり、配管や配線は、その二重床の間に設置されます。

 そのとき、排水管の勾配と管径が課題となりやすいのです。その理由は、給水管や給湯管の管径が13〜20mmであるのに対して、排水管は内部を汚水層と通気層の2層で構成するため、管径が2倍以上太くなるためです。加えて、排水管は配管勾配が必要です。そのため、排水管を設置する二重床内のスペースは、その範囲だけさらにスラブの位置を下げるなどして、二重床内の高さを確保する必要が生じます。

 このため、水まわりは集約してレイアウトされ、排水管の接続先である排水立て管の位置のそばに計画されることが多くなっています。

 すると、例えば、ライフステージが変わり、高齢者の在宅介護のニーズが出て、トイレや洗面台を増設しようとしても、もともと水まわりの設置を想定していない室は、排水管を設置できず、思い通りの場所に水まわりを設置することは難しいという事象が生じます。

 すなわち、人生100年時代といわれ、住居のレイアウトを変化させていくことが求められる時代になっていますが、従来の排水システムでは、それに対応するのが困難なのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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