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木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

連 勇太朗 連 勇太朗 明治大学 理工学部 専任講師

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戦後の都市部で大量に建設された木造賃貸アパートは、80年代以降、建て替えが進んで減少しました。しかし、残っている木賃アパートを建て替えるのではなく、再生する活動が本学理工学部の研究室によって行われています。それは、現代社会が抱える問題に対するアプローチでもあります。

木賃アパートを改修するための「モクチンレシピ」

連 勇太朗 私はCHAr(チャー)というNPO法人を運営しています。CHArはCommons for Habitat and Architectureの略です。このNPOのビジョンは、「つながりを育む、まちをつくる」です。私たちはつながりこそが、21世紀の都市および、居住環境をつくる最も重要な要素であると確信しています。

 このビジョンを、実践を通して形にしていくことで理論との両立を図り、研究を進めています。その実践プロジェクトの中核になっているのが「モクチンレシピ」というデザインツールでありウェブサービスです。

 「木賃(モクチン)」とは、木造賃貸アパートの略です。戦後、都市部で大量に建設されたアパートで、フォークソングで出てくるような4.5畳の風呂なしアパートを想像してもらえればいいと思います。実際リサーチをしてみると色々な種類があることがわかりますが・・・。

 1960年代後半には、東京23区内の全住居の約4割をこうしたアパートが占めていました。近年では、老朽化で建て替えなどが進みましたが、まだ、23区内だけでも20万戸以上あります。

 さらに、山手線の外側には円環状に木賃ベルトと言われたエリアがありますが、これらのエリアは木造密集市街地(木密)と呼ばれ、低層の木造住宅が密集して建っているようなエリアです。木賃はこうしたエリアにたくさん残っています。

 とはいえ、老朽化した木賃は人々から敬遠されるため、空き室や空き家になっていることも多く、そのために、老朽化した木賃があることによってまちが空洞化したり、地域を衰退させる要因にもなっています。

 木賃がまだ多く残っている理由のひとつは、実は、建築関係の法律、不動産の仕組み、税制が戦後の新築を前提とした経済政策によって規定されているからです。

 接道条件を満たしていなかったり、融資が獲得できなかったり、土地所有が複雑だったりすることにより更新できない状況にあるアパートが多くあります。

 また、オーナー自身が高齢化しており、建て替えのために新しく投資することを嫌がったり、経済的に難しいこともあります。

 そこで、私たちが考えたのが、小さくリノベーションを繰り返すことによって建物をバリューアップすることです。

 老朽化した木賃を、デザイン的にも、機能的にも改修して付加価値をつけることによって、新たな居住者を呼び、木賃を含めた周辺地域の新陳代謝を図ることで、まちや地域自体の活性化や新陳代謝につなげていこうとしています。

 そのための様々な改修アイディアを、料理のレシピのように、図面や仕様書と共にオープンソースで公開し提供しているのが「モクチンレシピ」です。アイディアを公開することで、今まで建築家やデザイナーが介入することができなかった木賃アパートや不動産賃貸市場に介入できるようになります。物件オーナーや不動産会社がデザインのリテラシーを獲得することで、ボトムアップでアパートの質的な底上げを実現していくことができます。

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